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環境の変化で自在に色を変える新材料を開発―水と酸化チタンナノシートを使い実現:理化学研究所/東京大学/物質・材料研究機構

(2016年9月1日発表)

(国)理化学研究所、東京大学、(国)物質・材料研究機構は9月1日、共同で環境の変化に応じて瞬時に色が変わる新材料を開発したと発表した。

 酸化チタンナノシートを水の中に微量(1%未満)分散してナノシート間に働く静電反発力(二つの物質間に働く電気的な反発力)を極限にまで高めると分散液中のナノシートが規則正しく配列して鮮やかな色を示すことを見つけ実現したもので、「動的フォトニック構造体」と呼ぶ。

 フォトニック構造体は、可視光の波長と同程度の数百nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の周期構造を持つ材料で、周期長に対応した波長の光を選択的に反射して色素を持たずに鮮やかな色を呈す性質を持つ。そのため、フォトニック構造体は、光の取り出し・閉じ込め・伝搬制御など光を自在に操るツールとして有望視され、国内外で盛んに研究が行なわれている。

 しかし、これまでに見つかっているフォトニック構造体は、無機結晶や有機ポリマーなど硬い材料に限られていた。

 それに対し、自然界には、流動的な物質で構成された動的フォトニック構造体を細胞内に持ったルリスズメダイなどの魚が生息し体の色を自在に制御している。

 そうした自然界のように人工の材料を用いて動的フォトニック構造体を創り出すことができれば、環境の変化に応じて色を瞬時に変えるツールとなり、フォトニック構造体の用途は飛躍的に拡がると見られている。

 今回研究グループは、水に分散した微量の酸化チタンナノシートを数百nm周期で規則的に配列させることにより、その動的フォトニック構造体を開発することに成功した。99%以上が水からなるにも関わらず温度などの環境の変化に対応して体色を制御する魚のように色を変える特性を持っている。

 使用する酸化チタンナノシートは、幅が数μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)、厚みは0.75nmと極めて薄い。

 このナノシートは、マイナスの電荷を帯び、水中に分散させるとシートとシートの間に反発し合う静電反発力が働き、その静電反発力によりシートの間隔を一定に保った周期構造(層状周期構造)が形成されて周期長に対応した波長の光を選択的に反射して鮮やかな色を呈するという仕組み。分散液の色は、温度・pH(ペーハー、酸アルカリ度)・磁場などの環境の変化に応じて変わり、全可視光領域にわたって変色する。

 色の変化は、非常に早く、たとえば温度変化に対しては僅か0.2秒で完結するという。

 研究グループは、この動的フォトニック構造体について、光学検知式センサーやフルカラー電子ペーパー、可変フォトニックレーザーなど様々な応用が期待されるといっている。