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7世紀末と9世紀末の東海地震の痕跡見つける―南海地震との連動性が明らかに:産業技術総合研究所ほか

(2019年11月19日発表)

 (国)産業技術総合研究所は1119日、7世紀末と9世紀末の東海地震の痕跡を示す津波堆積物を静岡県西部の低地で見つけたと発表した。

 発見したのは、磐田市(静岡県)の太田川河口近く。これにより過去1,300年間について東海地震がいつ発生し、南海地震とどういうタイミングで起きていたかがより明らかになったといっている。

 研究には、静岡県立磐田南高等学校、秋田大学が参加した。

 東海地震とは、気象庁によると駿河湾から静岡県の内陸部を想定震源域とするマグニチュード(M8クラスの地震のこと。フィリピン海プレート(プレートは、厚さ100kmほどの地下の岩盤)のユーラシアプレートへの沈み込みが原因で起こるとされ、分かっている最も古い東海地震は1096年の永長地震。それより前は歴史記録がなく、今回の発見はその空白を埋める痕跡を掴んだことになる。

 調査は、農耕に向かない低湿地が江戸時代初めのままで広く残っている太田川低地に着目。太田川の河川拡幅工事で現れた約1kmにわたって続く深さ約4mの地層断面を対象にして3年間にわたって実施した。

 その結果、地層の中からザクロ石を含む4枚の津波堆積物を発見することができた。

 ザクロ石は、ガーネットとも呼ばれるケイ酸塩鉱物の一種。太田川の川砂には含まれていない成分だが、静岡県西部の海岸の砂には多く含まれていて溯上(そじょう)する津波がそのザクロ石を含んだ砂を海岸線から2km以上も離れていたと見られる太田川低地にまで運んだと考えられ、さらに堆積物の内部に津波の大波が繰り返し何度も押し寄せてきたことを示す構造が残っていたことから津波堆積物であることが分かった。

 得られた4枚の津波堆積物の年代を調べたところ7世紀末頃、9世紀末頃各1枚と、11世紀から12世紀、15世紀の後半から17世紀初頭、のもの各1枚であることが判明、11世紀から12世紀の堆積物は1096年の永長地震、15世紀の後半から17世紀初頭のものは1498年の明応地震で生じたものと推定している。

 また、9世紀末頃に津波が発生していたことが分かったことで、歴史記録のある887年の南海地震と東海地震とが同時に発生していた裏付けが得られたといっている。