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小麦アレルギーを起こす遺伝子見つける―500人超す患者を対象に調べ分かる:筑波大学ほか

(2019年7月18日発表)

 筑波大学、藤田医科大学、(国)日本医療研究開発機構の共同研究グループは718日、小麦アレルギーへの、なりやすさ・なりにくさ、に関わる遺伝子を見つけたと発表した。社会問題にもなった「経皮感作(けいひかんさ)小麦アレルギー」研究の一環として解明した。小麦は、化粧品などの直接皮膚に触れる成分の中にも含まれていることから、今回の成果はより安全な製品の研究開発などに役立つものと期待される。

 アレルギー疾患は、国民のおよそ2人に1人がかかる国民病とされ、遺伝(体質)と環境の両方が関わって発症するが、最近世界的に注目されているのが経皮感作。

 経皮感作は、皮膚にアレルゲン(アレルギー物質)が接触してアレルギー反応を起こすこと。その「経皮感作アレルギー」のリスクを英国の医師がピーナツオイルを含む製品で最初に見つけたのは2003年。日本でも2009年に小麦を加水分解して得た加水分解小麦を含む石鹸で経皮感作小麦アレルギーが生じたとする報告があり社会問題となった。日本アレルギー学会が2012年から2014年にかけて行った調査では全国で約2,100人の発症が確認されている。

 これだけ大規模な経皮感作アレルギー患者の発生は、世界的にも過去に報告がないといわれ、日本医療研究開発機構や文部科学省などの支援のもと経皮感作小麦アレルギーの病態解明や予防法、関連ペプチドの同定などの研究が進められている。そのリーダーである筑波大医学医療系の野口恵美子教授、藤田医科大の松永佳世子教授らの研究グループが今回遺伝子の解明に成功した。

 研究は、全国のアレルギー疾患診療医師の協力を得て経皮感作小麦アレルギー患者525人と、一般人3,244人から得た遺伝子情報を「全ゲノム関連解析」と呼ばれる手法によって解析する方法で行った。

 全ゲノム関連解析は、ゲノム(全遺伝情報)の数十万個という膨大な数の遺伝子型のどれが疾患に関連しているのかを見分ける手法。その結果、経皮感作小麦アレルギーへのなりやすさ・なりにくさに関わる遺伝子が「HLA-DQ」と「RBFOX1」という両領域に存在することが分かった。

 HLAは、免疫反応の鍵になる遺伝子で、極めて多くの種類があり、個人差がある。研究グループは「個人が有するHLA型の違いが経皮感作小麦アレルギーへのなりやすさ・なりにくさに関係していると考えられる」と話している。