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ポリマー膜と銅箔を高強度で接合可能に―5G用フレキシブルプリント配線基板の量産に道:産業技術総合研究所ほか

(2019年3月12日発表)

 (国)産業技術総合研究所は312日、(株)新技術研究所と共同で、ポリマー膜と銅箔から成るフレキシブルプリント配線基板を作製できる高強度な材料接合技術を開発したと発表した。高周波特性に優れる第5世代通信(5G)向けプリント配線基板の作製が期待されるという。

 フレキシブルプリント配線基板(FPC)は、薄く柔らかい絶縁性フィルムに導電性金属を貼り合せて電気回路を形成した基板。近年、絶縁層にポリマー膜、配線層に銅箔を用いたものが5G用のFPCとして注目され、高周波でも伝送損失の少ない平滑性が高い銅箔とポリマー膜とを強く貼り合せられる接合技術が求められていた。

 研究グループは今回、ポリマー膜に紫外光を照射して表面を酸素官能基化し、その上から銅箔をヒートプレスで接合する技術を開発した。銅箔の表面を粗くする、いわゆる粗面化の必要がなく、接着剤も使わずに高強度の接合が得られる。

 膜表面に酸素官能基を導入するために今回開発した化学ナノコーティング技術は、簡単な装置で効率よく官能基を導入でき、使用する酸化剤も少なく、表面改質の持続時間も長いといった特徴がある。接合の強さを示す剥離強度は開発目標値を上回ったという。

 新接合技術は、接合剤を利用した従来処理よりも接合強度が大きいだけでなく、伝送損失や接合温度およびコストを大幅に下げられるといったことが期待できることから、今後5G用基板の高効率量産プロセスの開発を目指すとしている。