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絶滅が心配される亜熱帯域のサンゴに“避難場所”―和歌山以南の温帯域に可能性のあることが分かる:宮崎大学/海洋研究開発機構/産業技術総合研究所ほか

(2019年2月19日発表)

 宮崎大学、(国)海洋研究開発機構、(国)産業技術総合研究所、東京工業大学は219日、和歌山以南の温帯域が絶滅の心配される亜熱帯域のサンゴの“避難場所”として機能する可能性のあることがサンプリング調査の結果分かったと発表した。

 サンゴは、卵から生まれる動物の一種で、クラゲなどの仲間。サンゴ礁を作る造礁サンゴと、非造礁サンゴがあり、美ら海振興会によると世界には約800種が生息、日本では亜熱帯の沖縄だけで約200種が確認されている。

 さらに近年は、亜熱帯域で危機的状況にさらされているサンゴが日本の温帯域で増えるようになってきている。これは、温暖化による日本近海の海水温の上昇(気象庁ウェブサイトによるとこの百年間の海水温上昇は約1.1℃)にともないサンゴの幼生(ようせい)が海流によって亜熱帯域から温帯域へ流されても生存できるようになったからだと見られている。

 しかし、そうした変化で温帯域の元来のサンゴが絶滅するようなことにならないのかといった検討は十分になされておらず、また海流によって亜熱帯域から温帯域へサンゴの幼生がどのように分散されているのかも分かっていない。 

 今回の研究は、(国)国立環境研究所、(国)水産研究・教育機構中央水産研究所、九州大学、筑波大学の研究グループと共同でIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストカテゴリーで準絶滅危惧種に指定されている熱帯・亜熱帯域から温帯域にかけて生息するサンゴ「クシハダミドリイシ」のサンプル採取を亜熱帯域の宮古島(沖縄県)から館山(千葉県)までの14の海域で行い遺伝解析を実施した。

 その結果、昔からサンゴがいる和歌山以南の温帯域は遺伝的多様性が高く、亜熱帯域の絶滅が心配されているサンゴの避難場所になる可能性があることが分かった。また、亜熱帯域から温帯域へのサンゴの幼生の分散は、1世代で起きることは稀で、複数世代かかることが分かった。