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シマフクロウ、タンチョウを保全して他の鳥類も守る―長年の現地調査と市民の観測データ活用し実証:高知大学/森林総合研究所ほか

(2016年7月29日発表)

高知大学、(国)森林総合研究所、北海道大学は7月29日、シマフクロウ環境研究会、タンチョウ保護研究グループとの共同研究でシマフクロウとタンチョウの生息地の保全と再生によって他の鳥類も守られることが分かったと発表した。

 シマフクロウは、広葉樹の大木に巣を作る全長70cm、翼を広げると約180cmにもなる世界最大級のフクロウ。

 20世紀初頭までは北海道全域に分布していたが、森林伐採が進み巣作りをする営巣地が少なくなったことと、河川の改修や砂防ダムの建設が進んで餌になる魚が減ったことなどにより生息数が大幅に減った。

 現在は、知床、根室、日高など北海道の東部で見られるだけで、生息数は約140羽といわれ、絶滅の恐れが最も高い「絶滅危惧1A類」に指定されている。

 一方、全長140cm、翼を広げると約240cmにもなる日本の野鳥の中で最も大きいタンチョウも江戸時代までは北海道各地にいたとされているが乱獲と生息地の湿原の開発で激減。1952年には、特別天然記念物に指定され、国や自治体による保護施策が採られている。

 シマフクロウとタンチョウは、北海道の森林生態系、草地・湿地生態系を代表する鳥類で、それを保全すると他の多くの鳥類も同時に保全できるものと考えられているがその科学的検証はまだされていない。

 研究グループは、20年以上に及ぶ詳細な現地調査で得られたシマフクロウとタンチョウの営巣地点のデータと北海道の鳥類の多様性地図をもとに両種の指標種としての検証を行った。

 検証では、北海道立総合研究機構環境科学研究センターが開発・管理している野生鳥類の分布データベースに一般市民による長年の野鳥の観察記録を加えて北海道の森林や草地、湿地の鳥類の多様性地図を作成。その地図に長年にわたる現地調査から得られたシマフクロウとタンチョウの営巣地点データを重ね合わせて営巣地と非営巣地の鳥類の多様性の差を調べた。

 その結果、シマフクロウとタンチョウの営巣地周辺は、非営巣地と比べて森林性及び草地・湿地性鳥類の種多様性が高いことが判明した。

 研究グループは、シマフクロウとタンチョウの生息地の保全と再生によって開発で個体数が減少した他の森林性及び草地・湿地性生物の効果的な保全が併せて行なえるようになると見ている。