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燃料電池PCFCを実用サイズに大型化―超高効率発電の実現に道:産業技術総合研究所ほか

(2018年7月4日発表)

 (国)産業技術総合研究所は74日、超高効率発電が実現できると期待される燃料電池「プロトン導電性セラミック燃料電池セル(PCFC)」を世界で初めて実用サイズで作製したと発表した。これまで大型化が難しかったが、量産可能な製造法を用いて8㎝角の大型化に成功した。水素から直接電気を取り出せる燃料電池による超高効率発電が実用化すれば、水素社会の実現に役立つと期待している。

 燃料電池は水素などの化学エネルギーを直接電気に変換する装置。このうち固体酸化物形燃料電池(SOFC)は心臓部の固体電解質層にイオンを選択的に透過させるセラミックスを使う。その中でも特にPCFCは最も小さいイオンである水素原子核「プロトン」を選択的に透過させるセラミックス膜を採用、火力発電(61%)を上回る高い発電効率(75%)が実現できる技術として実用化が期待されている。

 産総研は今回、(国)新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業として実用サイズのPCFCの開発に取り組み、発電効率の指標となる電圧効率を大幅に向上させることに成功した。これまでプロトン透過型セラミックスを作るには1,700℃以上の高温焼成が必要で大型化が難しかったが、産総研は電解質材料にバリウム系ペロブスカイトと呼ばれる材料を使い、量産化にも適用可能な拡散焼結と呼ぶ新技術を開発して大型化に成功した。

 その結果、量産化が可能な押出成形法などを用いてPCFCの電解質層用の高品質セラミックスが効率よく作れるようになり、8cm角のものやチューブ型など各種形状のPCFCが試作できた。従来技術では最大でも直径3cmの円板型に留まっていた。

 新技術で5cm角のPCFCを試作して600℃で作動させたところ、電圧0.85V付近で1㎠当たり0.3Aの電流密度が得られた。同等の電圧、電流密度を得るのに100℃以上高い動作温度が必要なSOFCより優れた発電特性を発揮した。

 産総研は、新しいPCFCの優れた発電特性が確認できたとして、今後は「超高効率PCFCの実証に向けて産官学の連携研究を推進する」という。将来的には再生可能エネルギーと組み合わせた電力ネットワークや水素活用電力ネットワークの構築につなげる。