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晩生(ばんせい)の低アミロース米を開発―待望の新品種、名称は「ミルキーオータム」:農業・食品産業技術総合研究機構

(2018年1月17日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は117日、普通より遅く成熟する晩生の低アミロース米(まい)を開発し「ミルキーオータム」と名付けた、と発表した。これまでの低アミロース米と成熟する時期(熟期)の異なる低アミロース米の新品種開発が求められているだけに普及が期待される。

 米(精白米)の約75%は、デンプン。主としてアミロースとアミロペクチンという成分から構成されている。アミロースは、数百個のブドウ糖が結びついた高分子で、うるち米が1723%前後のアミロースを含んでいるのに対し317%前後しか含んでいないのを低アミロース米といっている。

 アミロースの含有率が低いほど粘り気の強いご飯になり、農研機構は「ミルキークイーン」と呼ぶ低アミロース米を平成7年に開発済みで、粘り気が強く、味が良く、冷めても硬くならないことから広く栽培され市場で高い評価を得ている。

 しかし、「ミルキークイーン」は、「コシヒカリ」の突然変異に由来する品種であるため「コシヒカリ」と熟期が同じになってしまい、作業の時期が重なる作期競合が全国の広い範囲で生じている。

 こうしたことから、「ミルキークイーン」や「コシヒカリ」とは熟期が異なり、収穫などの作業時期を分散させることが可能な低アミロース米の新品種開発が強く望まれている。

 今回の「ミルキーオータム」は、それに応えられるようにしようと「ミルキークイーン」と「関東HD2号」を交配して収穫時期の遅い晩生の低アミロース米を実現したもので、同機構のつくばみらい市(茨城)の水田での生育試験で「ミルキークイーン」より出穂期が8日、成熟期が14日それぞれ遅いことを確認した。

 この生育結果から同機構は、平成21年に開発した極早生(ごくわせ)の低アミロース米品種「ミルキーサマー」を8月下旬から9月上旬、「ミルキークイーン」を9月中旬に収穫し、その後の9月下旬から10月上旬に今回の「ミルキーオータム」を収穫するという3品種を効率良く利用するミルキークイーン型低アミロース米の作期分散が可能になるといっている。

 新品種「ミルキーオータム」のアミロース含有率は、9.2%で「ミルキークイーン」に近く、炊いたご飯の食味も同じ位の「上中」のレベルという。