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コメ収量予測モデルを複数併用すると高精度予測可能―世界16種類のモデルの予測値を実測値と比較し評価:農業・食品産業技術総合研究機構

(2017年12月7日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は127日、二酸化炭素(CO2)濃度が上昇した際のコメ収量を予測する世界16種類の予測モデルの精度を実測値と比較、評価したところ、個々のモデルの予測値に大きなばらつきはあったが、全モデルの予測値の平均値は実測値とよく一致しており、複数の予測モデルを用いるとコメ収量を精度よく予測できることが分かったと発表した。

 気候変動にうまく適応していくには気候変動が作物生産に与える影響を正確に予測する必要がある。影響の主な要因としては、気温上昇とCO2濃度の上昇があり、CO2濃度については植物の光合成速度を高めて増収に作用すると考えられ、世界各地でコメ収量予測モデルを用いた予測が行われている。しかし、モデル間の比較や統一基準での予測精度の評価は行われていなかった。

 そこで農研機構は世界9か国の18機関と協力し、世界各地で開発された16種類の予測モデルを対象に、予測精度の比較評価を行った。

 比較用の実測値としては、岩手県雫石町と中国江蘇(こうそ)省で行われたCO2高濃度屋外実験で得られた値、それとアメリカのフロリダ州にある人工気象室で得られた実験結果を用いた。

 CO2濃度約370ppmppm100万分の1)における収量予測では、個々のモデルの予測値のばらつきは大きかったものの、全モデルの平均値は実測値とよく一致した。

 約50年後を想定したCO2濃度約570ppmにおける収量予測では、全モデルの予測値の平均値は実測された収量の増加率とよく一致した。ただ、個々のモデルの予測値のばらつきは、実験誤差よりも著しく大きかった。

 これらの結果から、複数の予測モデルを用いるとCO2濃度上昇のコメ収量への影響を精度よく予測できることが分かったとし、今回の成果を個々のモデルの精度向上に活かして行きたいとしている。