[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

慢性腎臓病の発症・重症化―血液と尿で早期予測:筑波大学ほか

(2026年4月3日発表)

 筑波大学と自治医科大学は4月3日、高齢化で増える慢性腎臓病の発症と重症化を血液と尿の検査で早期に予測する手法を見出したと発表した。体に不要な老廃物を尿として排出するために腎臓が濾過する血液量が老化とともに減少していく速度を推定、腎機能の低下を評価できるようにした。慢性腎臓病に関する最新の仮説とも合っていることを確認、その発症や重症化を早期に予測して適切な対策をとることに役立つと期待している。

 超高齢化が進む日本では慢性腎臓病の患者が年々増加、その発症と重症化を早期に予測して適切な予防対策をとることが重要な課題になっている。そこで研究チームは「細胞が高濃度のリンにさらされると障害を受ける」という点に注目、尿を作る腎臓の特定部位を流れる尿の元「原尿」中に含まれるリンの濃度が高い人は、加齢に伴う腎機能の低下が早いのではないかとみて詳しく検討した。

 研究では、平均年齢62歳の男女308人(女性63%、慢性腎臓病患者36%を含む)の協力を得て血液と尿を採取・分析し、腎臓で血液から濃縮されて尿になる前の「原尿」に含まれるリン濃度を算出。その後、5年間にわたって加齢に伴う腎機能の低下を評価した。

 その結果、調査開始時に血中のリン濃度が正常でも、原尿中のリン濃度が高かった人は、腎臓の糸球体による尿のろ過量の低下速度が大きいことがわかった。さらにこの関係は、追跡開始時の年齢や性別、基礎疾患の有無、尿に含まれるアルブミンなど腎機能に関する他の指標の影響を考慮した場合でも、一貫して認められたという。

 慢性腎臓病の発症・重症化については、腎臓内にある原尿中でリンとカルシウムが結合して微小なリン酸カルシウム結晶ができ、それが細胞に取り込まれて障害を引き起こすという「CPP病原体説」が動物実験による最新の仮説とされている。今回の研究で、この仮説がヒトでも成立することが初めて示せたという。

 研究グループは、「食事などから摂取するリンの量を調節する介入研究などを通して、腎機能低下を抑制できるかどうかを調べ、慢性腎臓病の発症及び重症化予防に関する新たな知見の創出に取り組みたい」と話している。