[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

印刷で高性能な有機系熱電変換材料作ることに成功―低温排熱を電気に変換し有効利用する新たな道:新エネルギー・産業技術総合開発機構/未利用熱エネルギー革新的利用技術研究組合/産業技術総合研究所

(2017年3月14日発表)

 (国)新エネルギー・産業技術総合開発機構、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合、(国)産業技術総合研究所は3月14日、印刷で高性能な有機系の熱電変換材料を作ることに成功したと発表した。

 身の回りや生産現場などから出ている膨大な量の排熱を電気に変換して有効利用するには、熱電変換素子の変換効率を高めると共に軽量化するなど利便性を良くする必要がある。

 新材料は、それに応えようと未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合メンバーの産総研が有機系の熱電変換素子高性能化研究の中で200℃以下の低温排熱でも利用できるようにすることを目指し開発した。

 有機系材料を使えば、従来からの無機系より軽量で、かつ柔軟性を持った変換素子が低コストで製造できるようになると考えられ、研究開発が進んでおり、現在は導電性高分子を使う「カーボンナノチューブ-導電性高分子複合材料」による熱電変換素子の研究が主流になっている。

 それに対し今回の新材料は、導電性高分子より汎用性や耐久性、価格などの面で優れている典型的な絶縁体高分子であるポリスチレンをカーボンナノチューブと混合するという方法で実現した。

 作り方は、ポリスチレンを溶かした有機溶媒の中にカーボンナノチューブを分散させ、その分散液を基板上に塗布、有機溶媒を蒸発させる方法によって作る。カーボンナノチューブの束の直径を小さくすると電気伝導性を大幅に向上できるのを見つけたことが高性能化できたポイントで、従来の分散液を基板上に滴下して乾燥させる単純な印刷手法で作製したカーボンナノチューブ-導電性高分子複合材料のトップレベルの概ね2倍以上の性能を確認したという。

 産総研は、有機系熱電変換材料のさらなる性能向上と素子の高効率化に取り組んでいくとしている。