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宇宙のチリが結晶に変化し、惑星の材料となる瞬間を初めて観測―原始太陽系の物質進化をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた:理化学研究所

(2026年2月4日発表)

 宇宙空間に漂うチリがどのように赤ちゃん星(原始星)になるかの重要な証拠を、(国)理化学研究所を中心とする国際共同研究グループが初めて観測したと2月4日に発表した。若い星を取り巻くガスやチリ(ダスト)が、周囲の爆発的な加熱で結晶に進化する瞬間を捉えた。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の成果。

 JWSTは2021年12月に打ち上げられ、2024年から運用を開始した。直径6.5mの最大の鏡を持ち、宇宙初期に生まれた暗い天体を赤外線波長帯で観測している。

 地球などの惑星や小惑星、彗星は、若い星を取り巻く円盤の中でケイ酸塩を主な材料にして作られる。

 ケイ酸塩はもともと構造が不規則なガラス状の「アモルファス(非晶質)」だが、絶対温度900K(ケルビン、約630℃)の高温にさらされると規則正しい構造を持つ陶磁器のような「結晶質」に変化する。

 宇宙空間の極寒状態で作られる彗星からも、高温中でしか作られないはずの結晶が見つかっていた。太陽系の内側で焼かれた物質がどのようにして外側へ運ばれたかが長年の謎だった。

 今回の研究には、理化学研究所の坂井星・惑星形成研究室のヤン・ヤオルン研究員と、ソウル大学、東京大学、韓国天文硏究院、宇宙望遠鏡科学研究所(米国)など11機関が参加した。

 硏究グループは、JWSTの中赤外線観測装置(MIRI)を使って原始星「EC53」に注目し、明るさが落ち着く「静穏期(せいおんき)」と爆発的に明るくなる「バースト期」の両方を精密に観測し、比較した。

 その結果、静穏期には見られなかったフォルステライト(苦土かんらん石)などが発する特有のスペクトルが、バースト期にだけ出現していることが明らかになった。

 これは円盤内部で急激に加熱された後、チリがゆっくりと冷却され結晶化していく状態で、「焼きなまし」の直接の証拠であるとしている。焼きなましとは金属の熱処理技術の一つで、加熱した後ゆっくりと冷却させる技法をいう。

 低温領域では結晶に変化は見られなかったが、アモルファスが結晶になるバースト中の高温(900 K以上)の内側だけでこの反応が限定的に起きていることが分かった。

 さらに高速の原子ジェットを低速の分子流で包み込んだ「入れ子構造の噴出流」の構造があることも鮮明に描き出した。磁性流体(液状化した磁石)の円盤表面から物質が噴き出される現象と同じで、円盤の内側で焼きなましされた結晶が、風に乗って円盤の外側へと効率的に運び出されていると考えられる。

 ガスとチリに覆われていた原始星誕生の謎の一端を、巨大望遠鏡が詳細に解き明かした。

 研究グループは、「われわれの太陽系もまた、誕生初期に“爆発的増光”を繰り返すことで物質を焼きなまし、現在の惑星や彗星の材料を作り上げてきた可能性が高くなった」と見ている。