[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

ゲノムの74%がイントロン―単細胞藻類で発見:筑波大学

(2025年12月3日発表)

画像

クロララクニオン藻 (提供:筑波大学)

 筑波大学は12月3日、細胞の核内にあるゲノム(全遺伝情報)の74%が生命活動に必須のたんぱく質を作るアミノ酸の配列情報を持たないイントロンである生物を見つけたと発表した。温帯から熱帯にかけて海辺に生息する単細胞藻類の一種で、近縁種でもその割合は30%程度にとどまる。他の生物に比べてイントロンの割合が極端に高いため、その役割を探る重要な手掛かりになると期待している。

 筑波大生命環境系の平川 泰久 助教が見つけたのはクロララクニオン藻と呼ばれ、光合成に必須の葉緑体の進化を探る過程で突き止めた。クロララクニオン藻は、光合成に必要な葉緑体を持つ緑藻を自らの細胞内に取り込んで、光合成能力を獲得したことが知られている。

 今回の研究では、このクロララクニオン藻の一種「A.amoebiformis」を対象に、細胞の核内にあるゲノム配列を詳しく調べた。その結果、たんぱく質を構成するアミノ酸の配列を決めている塩基対の数は約2億個に上った。ただ、このうち実際にたんぱく質を作る際に必要な塩基対の配列は約1万7,500個にとどまることがわかった。

 一方、たんぱく質を作るのに必要な遺伝情報を含んでいない塩基配列「イントロン」は塩基配列全体の74%にも上り、他の真核生物に比べると極端に高かった。これに対しクロララクニオン藻の近縁種では、イントロンの割合は一般に30%程度にとどまることが知られている。

 そのため今回、研究対象にしたクロララクニオン藻では、近縁種に比べると遺伝子の数が少ないにもかかわらず、ゲノムのサイズは2倍以上も大きいことが分かったという。しかも、このサイズの違いはたんぱく質を作るのに必要な情報とは異なる大量のイントロンによるもので、一見して無駄な配列で構成されていることになる。

 今のところ、こうしたイントロンの増大に何が関与したかは不明だが、平川助教は「進化の過程でクロララクニオン藻の種分化後に膨大な数のイントロンが獲得された」と推測している。今後は複数種のクロララクニオン藻のゲノムを解読することで、イントロンが増大した過程について解明を進める。

クロララクニオン藻の細胞写真(左上)と緑藻の細胞内共生による二次葉緑体の獲得過程(左下)、および核ゲノムを構成するイントロンとエクソン(タンパク質に翻訳される配列)の割合(右)。 クロララクニオン藻の葉緑体の膜間には、共生した緑藻の痕跡核であるヌクレオモルフが見られる。A. amoebiformis のゲノム配列を解読したところ、近縁の B. natans には見られない、イントロンを豊富に含むゲノム構造を持つことが分かった。(提供:筑波大学)