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糖尿病などの原因遺伝子―旧人類から引き継ぐ:理化学研究所

(2024年4月18日発表)

 (国)理化学研究所は4月18日、沖縄から北海道まで全国7地域の日本人の全遺伝情報を分析、絶滅した旧人類のネアンデルタール人やデニソワ人から引き継いだ遺伝子領域を突き止めたと発表した。ネアンデルタール人からはアトピー性皮膚炎など7つの、またデニソワ人からは食生活や運動不足で発症する2型糖尿病に関連する領域を引き継いでいることが分かった。今回の成果によって病気の遺伝要因の特定も可能になり、新たな治療法の開発につながると期待している。

 東京大学医科学研究所に設置されているバイオバンク・ジャパンには、日本人約27万人分の生体試料が保管されている。今回はこのうち北海道から沖縄まで全国7地域の医療機関に登録された3,256人分のゲノム(全遺伝情報)情報を詳しく分析した。

 その結果、アトピー性皮膚炎のほか、前立腺がんや関節リウマチ、冠状動脈疾患など7つの病気に関連する11の遺伝子領域をネアンデルタール人から引き継いでいることが分かった。また、旧石器時代にアジア全域に分布していたデニソワ人からは、2型糖尿病のほか、身長に関する遺伝子領域を受け継いでいた。

 今回の研究では、日本人の起源についても多くのことが分かったという。これまで日本人は縄文時代の狩猟採集民と、弥生時代の大陸からの稲作移民の混血によって形成されたとする「二重構造モデル」が広く受け入れられてきた。ただ、今回の研究ではこれに加えて北東アジアから弥生時代に日本に渡ってきた集団も含む三つの祖先が徐々に混血して形成されたとする、三重構造モデルを裏付けるデータが多く得られたと、理研ではみている。

 今回の成果について、理研は「病気の原因となる遺伝要因の道程が可能になり、新たな治療法の開発ができるようになる」、「日本人を含む東アジアや世界各地の人々の遺伝的起源と人類史を理解するうえで重要な基礎になる」と話している。