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3,000億個の粒子で天の川銀河のシミュレーションを実現―人工知能とスーパーコンピュータ「富岳」を利用:理化学研究所ほか

(2025年11月21日発表)

 (国)理化学研究所、神戸大学、筑波大学などの国際共同研究グループは11月21日、人工知能(AI)とスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」を活用し、星や星間ガスなどを表す3,000億個の粒子を用いた天の川銀河のシミュレーションを達成したと発表した。銀河の形成と進化に関する理解の進展が期待されるという。

 私たちの住む天の川銀河は、数千億個の星と、それらを取り巻くガスやダークマター(暗黒物質)から構成されており、銀河の形成と進化を理解するには星の運動や超新星爆発を通じた星間ガスとの相互作用を定量的に明らかにすることが重要とされている。

 特に、大質量星は重元素を生成し、超新星爆発によってそれらを銀河中に拡散させ、銀河内の金属量を増加させることから、太陽系が誕生した環境の起源を探る上で重要な手がかりとなる。

 ただ、進化の過程を直接再現することは困難で、従来銀河シミュレーションがその役割を担ってきたが、そのシミュレーションは低分解能のモデルにとどまり、星一つ一つの運動や超新星爆発の衝撃波などの再現は十分でなかった。また、空間解像度や時間解像度を高めるのに膨大な計算量を要し、最先端のスーパーコンピュータでも1回のシミュレーションの完了までに数年を要すると見積もられていた。

 この課題を克服するため、研究グループはシミュレーションや最適化の効率を大幅に高められる「サロゲート・モデル」と呼ばれる数学的モデルを開発してきた。今回これを発展させるとともに、スーパーコンピュータ「富岳」を用い、3,000億個の粒子を用いて星一つ一つまでを分解した世界最高解像度となる天の川銀河のシミュレーションを実現した。

 すなわち、従来数十億粒子規模にとどまっていた銀河シミュレーションを100倍以上高解像度化して総粒子数3,000億個に到達、天の川銀河を星単位で解像する初の「star-by-star」シミュレーションを実現した。

 このシミュレーションによって、個々の星が起こす超新星爆発や、それに伴うガスの加熱・膨張・冷却といった過程を、銀河全体の進化と整合的に追跡することが可能になったという。