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133億光年彼方の銀河に超高温の星間塵―猛烈な星形成で塵の温度異常に加熱:早稲田大学、名古屋大学、筑波大学ほか

(2025年11月18日発表)

 早稲田大学、名古屋大学、筑波大学、広島大学の国際共同研究チームは11月18日、南米チリにある世界最大のアルマ望遠鏡を用いて133億光年彼方の銀河「Y1」を観測し、初期宇宙で銀河が急速に成長する仕組みを理解する上で重要な観測結果を得たと発表した。

 銀河「Y1」は、宇宙誕生からわずか6億年後に存在した非常に若い銀河。1年間に太陽180個分もの質量の星が生み出されており、天の川銀河の180倍に相当する激しい星形成が起きている。

 研究チームは、アルマ望遠鏡の特色の一つである短波長の電波観測機能を活用して、波長0.44mmの電波を観測した。その結果、Y1はこの波長で明るく輝いていることを発見した。

 この輝きは銀河内の塵粒子が星の光で異常に加熱されていることを示す。解析したところ、塵の温度は絶対温度90K(摂氏-180度)であることが判明した。これは他の遠方銀河に比べて2倍から3倍も高い温度で、天の川銀河の星間塵の温度と比べると5倍も高い。Y1は「超高温の星工場」であることが分かったという。

 Y1ではものすごい速さで星が形成されていることから、急速な星形成の結果、塵の温度が異常に加熱されている可能性が示された。

 これらの観測成果は、初期宇宙の銀河の中で元素や星間塵がどのように蓄積していくのかを理解するうえで大事な発見で、銀河の元素進化や星間塵の蓄積過程という長年の謎を解く手がかりになるとしている。

 今後は、さらに多くの遠方銀河を観測してY1のような超高温の塵がどれほど一般的に存在するのかを明らかにする予定という。また、アルマ望遠鏡の高解像度観測によって銀河内部で星や塵がどのように分布しているのかを詳しく調べ、初期宇宙で銀河がどのように成長し、多様な形へ進化していったのかを解明したいとしている。

最遠方の星間塵が検出された銀河Y1(丸で囲まれた赤い色の天体)。背景はジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で取得された画像(赤外線の波長を擬似的にカラーで表現) Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, J. Diego (Instituto de Física de Cantabria, Spain), J. D’Silva (U. Western Australia), A. Koekemoer (STScI), J. Summers & R. Windhorst (ASU), and H. Yan (U. Missouri)