分子界面に潜む「弱い結びつき」を電子共鳴で可視化―電子雲がつながっている痕跡をとらえる:自然科学研究機構/筑波大学ほか
(2025年8月28日発表)
自然科学研究機構 分子科学研究所と総合研究大学院大学、琉球大学などの共同研究グループは8月28日、分子とその基板との界面で生じる極めて弱い結びつき「ファンデルワールス相互作用」の存在を、電子の共鳴現象「ファノン共鳴」として初めて明瞭にとらえることに成功したと発表した。
ファンデルワールス相互作用は、原子・分子の電荷のゆらぎが互いを誘起(ゆうき)して生じる弱い引力を指す。共有結合やイオン結合を伴わずに生じる吸着や層間の結合の主因であり、分子界面に潜む「弱い結びつき」の主要な原因である。
近年この弱い結びつきは分子エレクトロニクスや二次元材料で注目されているが、材料間の結びつきが極めて弱いため、検出や解析が困難とされていた。
研究グループは、有機半導体分子ペンタセンをグラファイト(黒鉛)の表面に一層だけ吸着させた、弱くつながった界面系において、電子が共鳴的に振る舞うファノン共鳴を、シンクロトロン放射光を利用した低エネルギー角度分解光電子分光法という手法を用いて精密に観測した。
その結果、一見して結合がないと思われていた界面でも互いの電子雲がつながっている痕跡をとらえることに成功した。
この成果は、弱い結びつきの効果を、電子状態という物理量で可視化し、機能設計に生かす新たな指針を提供するもので、フレキシブル電子材料、センサー技術、量子情報処理などさまざまな革新技術の進展への寄与が期待されるという。