唾液で睡眠不良診断―自宅での健康管理に活用へ:産業技術総合研究所ほか
(2025年4月21日発表)
(国)産業技術総合研究所と茨城大学は4月21日、うつ病や生活習慣病の発症リスクを高める睡眠不良を唾液で判定する技術を開発したと発表した。人工知能(AI)技術のひとつである機械学習を用いて唾液を分析、睡眠不良の人を86.6%という高い確率で判定する6種類の物質を突き止めた。今後は唾液を簡単に分析できる試薬キットを開発し、自宅や高齢者施設などでの健康管理に活用できるようにする。
毎日の睡眠状態については簡易デバイスを用いて比較的簡単に客観的な計測ができる一方、慢性的な睡眠障害については診断が難しいとされている。そのため、本人に睡眠の質や寝つきの良し悪し、睡眠時間などを問うピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)の答えをもとに点数評価する手法などが使われている。
研究グループは今回、この質問票に答えないでも睡眠後に採取した被験者の唾液で睡眠不良かどうかを客観的に評価する手法の開発に取り組んだ。研究ではあらかじめPSQIの質問票に答えてもらい、スコア2点以下で睡眠に問題がないとされた被験者50人と、6点以上で睡眠不良とされた被験者50人から唾液を採取。中に含まれていた683種類の代謝物を機械学習の手法を用いて詳しく分析した。
その結果、PSQIで睡眠に問題がないとされた被験者と睡眠不良の被験者を判別するのに、唾液中に含まれる6種類の代謝物が重要な指標になることが分かった。そこでこれらの代謝物を指標にしたところ、ピッツバーグ睡眠質問票で睡眠不良と判定されるスコア6以上の被験者を86.6%の確率で判別できることが明らかになった。
今回の研究では、被験者に深刻な睡眠障害で治療を受けている患者は含まれていなかった。そのため今後は、睡眠障害の患者を対象にして新技術の有効性について評価をし、睡眠障害の診断や治療効果判定への活用を進める。同時に、自宅や職場、高齢者施設でのヘルスケアにも応用できるよう、唾液中に含まれるこれら6種類の代謝物を簡単に計測する試薬キットや簡易装置の開発に取り組む。