アトピー性皮膚炎―遺伝より環境が強く影響:筑波大学ほか
(2024年12月10日発表)
強いかゆみを伴うアトピー性皮膚炎の発症には遺伝的な要因よりも食物やダニなどの環境要因が強く影響する。筑波大学と東京慈恵会医科大学は12月10日、日本人と白人の集団を対象にした大規模なゲノム(全遺伝情報)解析でこんなことが分かったと発表した。遺伝的要因は喘息やアレルギー性鼻炎、花粉症に比べると小さいという。アレルギー疾患の分子メカニズムを理解する重要な一歩として、その予防や治療法開発に役立つと期待している。
研究チームが研究に用いたのは、筑波大と東北メディカル・メガバンクが収集した日本人一般集団4万6,602人と白人集団2万5,032人のゲノムデータ。遺伝子を構成する塩基配列が個々人でわずかに異なる遺伝子多型と、その人の病気や体形などとの関連を網羅的に調べる全ゲノム解析を実施した。
研究では、日本人と白人を合わせた解析で23の遺伝子多型があることがわかり、このうち4つは今回新たに見つけた。さらに、日本人集団に限ると18の遺伝子多型がアレルギーに関連していることも明らかにした。
これらの解析結果を用いて、遺伝子多型が喘息やアレルギー性鼻炎、花粉症などのアレルギー疾患とどの程度関係しているかを解析した。その結果、喘息とアレルギー性鼻炎、花粉症には遺伝子多型が強く関係しているが、アトピー性皮膚炎との間にはそうした強い関係はみられなかった。
アトピー性皮膚炎は、これまで①一次的な免疫機能障害が体内で免疫グロブリンE(IgE)という抗体を作らせ局所的な皮膚の炎症を引き起こす、②皮膚自体の機能障害が原因で免疫学的機能障害は二次的に起きる、という二つの仮説があった。
これに対し研究チームは、今回の成果は皮膚自体の機能障害を原因とする二番目の仮説を支持するもので「アトピー性皮膚炎に対する遺伝的素因の影響は、喘息やアレルギー性鼻炎、花粉症と比べると少ない」とみている。