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21世紀末の環境が稲の生育に及ぼす影響を調査―「栽培環境エミュレータ」使って解明:農業・食品産業技術総合研究機構

(2024年6月25日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は6月25日、21世紀末(2100年)という未来の地球環境が水稲(稲)の生育に及ぼす影響の一端を明らかにしたと発表した。「栽培環境エミュレータ」と呼ばれる人工気象室を使って解明した。高温と高CO₂(二酸化炭素)が稲の生育を早め、米の品質低下が起こる可能性があるという。

 エミュレートとは、人工的に模擬することをいう。「栽培環境エミュレータ」は、さまざまな栽培環境を再現できる人工気象室。気象環境に関するデータをパソコンで入力すれば栽培する環境をリモートで自由に変えることができ、実際を模擬した作物生育の実験が現場を使わず研究室に居ながら行える。農研機構はこれまでにロボット計測装置を内蔵した高機能なこの人工気象室を開発してイチゴの生育制御の研究などを行ってきた。

 温室効果ガスの排出増加による地球温暖化は、作物生産を不安定にし、食料供給の大きな問題になると危惧されていることから、日本人の主食の米の生産に21世紀末予想される気候が具体的にどのような影響を与えるのかを想定される湿度、気温、CO₂濃度などを「栽培環境エミュレータ」で人工的に変えて温暖化が水稲の生育に及ぼす影響を調べた。

 研究は、2種類の気候予測シナリオに基づいた21世紀末の気候環境を「栽培環境エミュレータ」で再現し、代表的な水稲品種の「あきたこまち」、「コシヒカリ」など5つの品種を模擬栽培して実際の栽培で得られているデータと比較した。

 すると、比較した実際の環境(1990年~1999年の平均環境)より21世紀末の模擬環境では、いずれの品種も生育が著しく早まり、開花までの日数の大幅な短縮が観察された。

 さらに、白未熟粒(しろみじゅくりゅう)と呼ばれる米粒が白くなってしまう未熟粒の発生が著しく増加することが分かった。

 一方、遺伝子については、網羅的な解析を行ったところ、高温や高CO₂に応答する気孔に関連する遺伝子群に大きな変化があった。

 研究グループは、「栽培環境エミュレータ」を利用することで未来の環境変化が水稲栽培に与える影響の一端を明らかにできたとし「温暖化に対応した品種を迅速に育成できると考えられる」といっている。