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水中の二酸化炭素を固定する藻類のたんぱく質を発見―細胞内小器官のピレノイドは種ごとに独自の進化を遂げた:筑波大学ほか

(2024年2月29日発表)

 筑波大学生命環境系の平川 泰久 助教と北海道大学の長里 千香子 教授のグループは2月29日、水中の二酸化炭素を固定化する細胞内小器官「ピレノイド」で働く新たなたんぱく質を発見したと発表した。ピレノイドは全ての藻類に共通なわけではなく、種ごとに異なり独自に進化してきたことを初めて突き止めた。

 人類が大量に作り出した二酸化炭素の3分の1は、「ピレノイド」と呼ばれる藻類の葉緑体内にある細胞内小器官で有機炭素に固定されている。

 ピレノイドの主な役割は、水中で二酸化炭素を濃縮し、酵素ルビスコに届け、固定化反応を効率化することだ。しかしこの反応は緑藻や珪藻の一部の種に限られることが知られていた。

 研究グループは様々な藻類を網羅的にあたり、質量分析法で解析することで約150個のピレノイドに含まれる関連たんぱく質を取り出した。さらに狙ったたんぱく質に結合する抗体を利用し、電子顕微鏡観察で最終的に8個の新しいピレノイドを見つけた。

 この中には重炭酸イオンと二酸化炭素の反応の触媒となる炭酸脱水酵素など複数の未知のたんぱく質が混じっていた。その多くは海の単細胞藻類クロララクニオン藻に特有のものだった。

 有機炭素に固定するピレノイドの器官は、それぞれの藻類で独立に進化してきた。この研究によって藻類が獲得した「水中で光合成を効率化」するメカニズムの一端が明らかにされた。

 研究グループは今後、研究対象を広げ進化の謎の解明を目指す。またピレノイドを持たない陸上植物に対しても、遺伝子操作によってピレノイドを組み込み、効率よく二酸化炭素を吸収できるようなスーパー植物の作成にも挑戦することにしている。