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ロボットに積めるインフラ点検用の小型X線検査装置を開発:新エネルギー・産業技術総合開発機構/産業技術総合研究所ほか

(2016年12月21日発表)

 (国)新エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクトにおいて、(国)産業技術総合研究所は静岡大学と共に、小型ロボットに積み込みのできる小型のX線非破壊検査装置を開発したと12月21日に発表した。1回の照射で5cmの厚さの鉄板の透過図が撮れる。橋梁や産業用のプラントの経年劣化などの検出にこれから威力を発揮するとみられる。

 高度経済成長期から半世紀がたち、多くの社会インフラや発電プラントなどの産業インフラの老朽化が進んでいる。表面からは見えない内部の劣化部分の検出方策としては、X線による検査装置が使われてきた。

 ところが装置が大型で、電源の確保が困難なうえ、手動で操作するため作業効率が悪く、ロボットに搭載できるような小型の線源と検出装置の開発が求められていた。

 鉄鋼部材の内部で進む腐食の検査には、かなり強力なX線を連続発生させる必要がある。そこで産総研は炭素原子でできたカーボンナノ構造体に着目した。

 真空装置内で200keV(キロ電子ボルト)の電圧をかけ、飛び出した電子を標的に当てることでX線を発生させる。ヒーターやフィラメントがないため待機電力は使わず、発生時の一瞬だけ電力が必要になる。耐久性も高いなどのメリットがある。

 一方、検出器も新たに2種類を開発し、性能確認のために検査部材として鋼板を数枚置き、その間に鉛文字を挟み込んで透過像を撮影した。5cm厚の鋼板ではX線を0.1秒間、1回照射しただけでクッキリした絵文字の画像が得られた。複数回の照射でより鮮明な透過像が得られることがわかった。