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国際共同研究で開発のサトウキビ品種がタイの奨励品種に決定―製糖工場の搾りかすバガスを利用したバイオエネルギー増産に期待:国際農林水産業研究センター

(2023年10月20日発表)

 (国)国際農林水産業研究センターは10月20日、タイ農業局と共同で開発したバガス(サトウキビの搾りかす)を多量に生産するサトウキビ品種が、タイの奨励品種「KK4」として採用されたと発表した。バガスの繊維含有量が多いものは、食糧生産に影響を与えずに、バイオエネルギーの増産も可能になると期待される。

 新たなサトウキビは、製糖用サトウキビとタイに自生するサトウキビの野生資源とを種間交配して育成した品種。現在普及している品種と比べると砂糖の収量は同じだが、繊維含有量が高くバガスを1.5倍多く生産できる。

 タイ東北部はサトウキビ生産が盛んだが、厳しい乾季の影響で株出し栽培の収量が低かった。株出し栽培とは、前年の収穫後に地下に残った株の茎を育てて再度収穫するもの。植え付けの手間が要らず、生産コストがかからないことから農家にとって重要な資源となる。

 国際農研はタイ全土から野生遺伝資源を収集し、株の再生力やバガスの生産性も高い品種開発に取り組み、3品種をタイで品種登録した。そのうちバガスの生産量が高く、製糖工場で利用可能な糖の含有量をもつ品種で、東北部の製糖工場が希望したものが、今年8月にタイの奨励品種KK4として正式に採用された。

 新品種は、東北部でも複数年にわたって株出し栽培を継続でき、茎が細く茎数が多い性質が機械収穫に適している。

 バガスは主に製糖工場のボイラー燃料として使われる。余剰バガスは電力などのバイオエネルギーに利用され、パルプ、ボード、バイオ化学製品の原料としても使われる。