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衛星から土壌の乾燥検出―植物発する蛍光で:国立環境研究所

(2023年10月16日発表)

 国立環境研究所は10月16日、植物の葉が枯れていない状態でも人工衛星から土壌の乾燥状態を検出できることが分かったと発表した。温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)がとらえた植物が発する蛍光データを、地上で調べたモンゴル平原の植生と比較分析することで確認した。世界各地で起きる干ばつによる地上の生態系被害を、宇宙からいち早く検出するのに役立つ。

 国環研が分析したのは、GOSATが宇宙からとらえた約10年分の太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF)のデータ。モンゴルと中国、ロシアの3カ国にまたがるモンゴル平原を対象に、地上で調べた草原の乾燥状態が植生に与える影響と、SIFのデータがどう関係しているかを詳しく比較検証した。

 具体的には、2009年から2018年までの10年間の気温や降水量、土壌水分量などの気象データや、他の衛星がとらえた植物の葉の面積(葉面積指数)などを用いて詳しく分析した。その結果、葉が枯れていない状態であっても、SIFの値が地上で調べた土壌の乾燥状態を反映して低下していることが明らかになった。

 これまでも、人工衛星データから植物の状態を監視する手法は提案されていたが、従来の方法では植物の葉が枯れた状態しか検出できなかった。これに対し今回の研究では、SIFを利用すれば植物が枯れるよりも前に土壌の乾燥が植生に与える負の影響を検出できることが分かった。

 今後さらに温暖化が進行すれば、モンゴル草原以外でも干ばつの頻発や強度が高まる地域もあると予想されているため、国環研はSIFデータの役割はこれから一段と高まるとみている。