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次世代磁気記録の消費電力を大幅に低減へ―HDDの超高密度化と超低消費電力動作に新たな道:東北大学/産業技術総合研究所

(2016年12月8日発表)

 東北大学と(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは12月8日、次世代の超高密度磁気記録の消費電力を大幅に減らせる技術を考案したと発表した。ハードディスクドライブ(HDD)をはじめとする磁気記録デバイスの記録情報の超高密度化と低消費電力動作の両立が期待できるという。

  HDDなどの磁気メモリーは不揮発性であり、記録情報の保持に電力を必要としない。このため情報の大容量化時代を担うメモリーとして期待されているが、記録密度を上げるために情報ビットを構成する一つ一つの磁石をナノメートルサイズに微細化していくと、熱揺らぎの影響が顕在化し、この回避にスイッチング磁場(情報書き込み用の外部磁場)を増大させざるを得ず、結果的に消費電力が増大するという問題を抱えている。

  研究チームは今回、この解決法を見出した。

 次世代の超高密度磁気記録材料の有力候補として鉄白金(FePt)ナノ磁石とも呼ばれるFePt規則合金がある。この磁石は磁化の向きが変化しにくい半面、磁化のスイッチングに大きな外部磁場を必要とし、消費電力が大きい。

 研究チームはこの合金にニッケル-鉄(Ni-Fe)合金を積層した薄膜を作製、Ni-Fe合金中に生じる磁気モーメントがスイッチングに及ぼす影響などを調べた。

 その結果、Ni-Fe合金層に磁気モーメントの渦構造が形成され、これに高周波の外部磁場を加えると磁気渦の運動が励起されてFePt合金層の磁化スイッチングが容易に生じることを見出した。つまり、FePt合金層を小さな外部磁場で磁化スイッチングできることがわかった。

 磁気渦の運動を利用してFePt合金層の磁化方向を小さなエネルギーでスイッチングできるというこの研究成果は、磁気記録デバイスによる情報の超高密度化と低消費電力動作の実現に道を開くもので、今後、スイッチング磁場のさらなる低減による高効率化などを進めたいとしている。