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高病原性鳥インフルエンザウイルスのゲノムを解読―青森と新潟で発生が見つかった鶏とアヒルを対象に:農業・食品産業技術総合研究機構

(2016年12月8日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は12月8日、青森県と新潟県で去る11月28日に発生した高病原性鳥インフルエンザの原因ウイルスのゲノム(全遺伝情報)を解読することに成功したと発表した。

 高病原性鳥インフルエンザは、略称を「HPAI」といい、鶏(にわとり)など肉や卵を得るために飼育している家禽(かきん)などに発生する致死率が高い伝染病として恐れられ、青森県と新潟県での発生は大きな問題になった。

 日本へは、海外からの渡り鳥がウイルスを運んでいると見られ、鹿児島県出水市のナベヅルのねぐらの水から亜型(あがた=派生的な型)のウイルスが分離されるなど各地で野鳥から亜型ウイルスが検出されているが、11月28日の青森県と新潟県の場合は発生の規模が違っていた。

 青森県での発生は、青森市のアヒル農場、新潟県は関川村の採卵養鶏場だったが、その数は合わせて約32万羽にのぼり、12月2日までに全て殺処分された。政府はこの事態を重く見て官房長官が「今年は周辺国でも感染例が多数確認されており、今後更なる感染拡大の恐れがある」と万全の対応を採るよう要請している。

 農研機構の動物衛生研究部門は、鳥インフルエンザの確定診断機関であることからHPAI発生を引き起こしたA型インフルエンザウイルスの亜型同定、病原性試験を行うと共に原因ウイルスのゲノムの解析を行った。

 解読は、大量の配列が解析できる、次世代シークエンサーを使って行われ、青森県と新潟県で発生したHPAIの原因ウイルスの塩基配列の99.5%(青森株)~100%(新潟株)を解読することに成功した。

 また、両ウイルスは、共に中国で分離されたウイルスなどとの混合で出現した遺伝子再集合ウイルスであることが分かったという。

 同機構は心配される人間への感染リスクについても評価しているが「青森株および新潟株にはこれまでに報告されている人への感染性に関与すると考えられるアミノ酸変異は認められなかったことから、本ウイルスが直接人に感染する可能性は低いと考えられる」とする結論が得られたと発表している。

 同機構は、解読したゲノム配列を近日中に公共遺伝子データベースで公開する予定といっている。