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次世代トランジスタ使った集積回路の動作を実証―超低消費電力IC実現への道拓く:産業技術総合研究所

(2016年12月5日発表)

 (国)産業技術総合研究所は12月5日、次世代のトランジスタとして注目されている「トンネルFET(トンネル電界効果トランジスタ)」を使ったリング発振回路を動作させることに成功したと発表した。

 トンネルFETは、低い電圧での駆動が期待されている新しい動作原理によるトランジスタで、超低消費電力集積回路への利用が期待されているが、入力信号を反転させて出力する回路をリング状に接続するリング発振回路を作製して動作させたのはこれが初めて。

 IT機器が消費する電力は、近年急激に増えている。その傾向は今後も続き、2025年には国内の電力消費量の20%を占めるまでになるとする試算も出されている。

 IT機器の省電力化を図るには、LSI(大規模集積回路)を構成する個々のトランジスタを駆動する電圧を下げることが不可欠となる。しかし、今のLSIに使われているMOSFET(電界効果トランジスタ)の駆動電圧は、徐々に下がってきてはいるものの既に頭打ちになりつつある。

 そこでその打開策として浮上してきているのがMOSFETの限界を超えた低電圧でオン・オフの切り替えができるトンネルFETで、原理的には0.2~0.3Vという低い電圧での動作が期待できるとされている。

 コンピューターには、電圧の「高」と「低」で「1」「0」を表現して論理計算を行うデジタル回路が使われ、MOSFETのデジタル回路はN型とP型のトランジスタからなる「相補型」と呼ばれる回路でできている。

 次世代のトンネルFETを用いた回路も同様に相補型回路方式にする必要があり、集積回路を実現するには動作速度の評価を行なえるリング発振回路が不可欠となる。

 しかし、リング発振回路には、相補型回路で作った数十個のトランジスタを集積し、その全てのトランジスタを同時に動作させることが求められる。そのため高度なプロセス技術が必要で、トンネルFETを使ったリング発振回路の動作はこれまで実現されていなかった。

 今回の成果は、その壁を破ったもので、N型とP型のトンネルFETを23個ずつ計46個使って相補型回路方式でリング発振回路を作製した。

 実験では、集積した全てのトンネルFETが正しく動作することが確認され、「トンネルFETによる相補型回路方式でのリング発振回路の動作が初めて実証された」と産総研はいっている。