量子ビット制御用集積回路のノイズ発生の起源を解明―極低温下では微小な原子位置の乱れが起源に:産業技術総合研究所
(2023年6月12日発表)
(国)産業技術総合研究所は6月12日、極低温で動作する量子ビット制御用集積回路のノイズ発生の起源を解明したと発表した。極低温下では微小な原子位置の乱れがノイズ発生の起源になっていることを突き止めた。ノイズ低減技術の開発や、制御用集積回路の高性能化、ひいては量子コンピューターの高性能化につながる研究の加速が期待されるという。
量子コンピューターの大規模集積化に向けては、多数の量子ビットを制御するために、現状では冷凍機外部に設置されている量子ビット素子の制御機能を集積回路化して、冷凍機内に設置し極低温で動作させる必要がある。
この制御用集積回路はノイズに弱いアナログ回路であり、ここで発生するノイズは量子コンピューターの性能を大きく低下させる。このため、ノイズ対策が重要だが、これまで集積回路を構成するトランジスタを極低温下で動作させた場合のノイズ発生の起源は明らかにされていなかった。
研究チームは今回、多数のトランジスタについてノイズ発生現象を統計的に評価し、極低温下では原子サイズの欠陥に付随して生じる微小な原子位置の乱れがノイズを発生させることを特定した。
実験では、ノイズ発生の起源がごく少数のみ含まれるような微細なトランジスタを用い、一つの発生の起源ごとに生じているノイズを区別して観測した。
室温で動作する通常のトランジスタの場合、主要なノイズ発生源は酸化膜中の欠陥だが、動作温度が低くなるとともに界面欠陥が起源となり、極低温下ではこれらの欠陥に付随する微小な原子位置の乱れが主要なノイズ発生源になっていた。
今回得られた成果から,今後はノイズ発生起源削減技術を用いた制御用集積回路やシリコン量子ビット素子を用いた大規模集積量子コンピューターの実現を目指すとしている。