オミクロン株検査の「感度」、「特異度」が明らかに―Jリーグ選手らの協力を得て実現:大阪大学/産業技術総合研究所ほか
(2023年1月30日発表)
大阪大学、(国)産業技術総合研究所、東京大学などの共同研究グループは1月30日、新型コロナウイルスの一種オミクロン株の抗原定性検査の「感度」と「特異度」を明らかにしたと発表した。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の選手らの協力を得て達成した。
新型コロナウイルス感染症対策として2つの検査法が使われている。その一つが抗原定性検査。採取した検体を専用の試薬と混ぜて陽性か、感染していない陰性かを判別する方法で、もう一方のウイルスの特定の部分の遺伝子を増幅して検出するPCR検査より安価でかつ頻度高く検査できる特徴を持つ。
人体にウイルス(抗原)が侵入すると、それに応じて体内で免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質(抗体)が作られる。その抗原と抗体の反応があるかを調べるというのが抗原定性検査によるオミクロン株チェックの原理。「感度」とは、感染しているのを感染していると正しく判定する確率、それに対し「特異度」は感染していないのを正しく感染していないと判定する確率のことで、抗原定性検査を行えば陽性、陰性が分かる。
しかし、抗原定性検査には感染した直後に感度が低下する可能性があるとする指摘があり、更に感度を明らかにするには、同じ日(同一日)に行ったPCR検査と比較する必要がありこれまで十分なデータに基づいた検証が行われていなかった。
今回その課題をJリーグの選手とスタッフの参加のもと解明することに成功したもので、阪大・感染症総合教育研究拠点の村上道夫特任教授(常勤)らの研究グループはJリーグのクラブで選手とスタッフが同一日に抗原定性検査とPCR検査を実施していることに着目した。そして、オミクロン株流行下において同一日同一個人に行われた両検査656件の結果に基づいて抗原定性検査の感度と特異度を解明した。
その結果、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度は、63%、特異度は99.8%であることが分かった。
また、症状の有無や感染してからの日数は、抗原定性検査の感度に影響しないことも分かったという。
村上特任教授は「PCR検査に対しての抗原定性検査の感度がおよそ6割程度であることを明らかにすることができた」とコメントしている。
抗原定性検査やPCR検査は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ有効な手段と考えられ、特に抗原定性検査は安価という特徴を持つが、感度は検査体制の効果を議論する際の基盤になる。研究グループは今回の成果について「抗原定性検査を用いた検査体制を評価する上で不可欠な知見を提供することができた」としており今後の活用が期待される。