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住宅地に残る草原の生物多様性を調査―空き地には多様な植物が生育:国立環境研究所ほか

(2022年10月7日発表)

 (国)国立環境研究所と東邦大学は10月7日、都市近郊の「空き地」に残る草原(くさはら)の植生を調査し、草原の歴史と生物多様性の関係を解明したと発表した。千葉県北部の千葉ニュータウン地域を対象にして調べたもので、空き地には多様な植物が生育していることが分かったという。

 昨年のG7サミットでは、生物多様性を守るための国際目標「30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)」が合意された。

 30 by 30は、生物の多様性が失われるのを食い止め、回復させようというもの。「2030年までに国土の30%を自然が良好に守られた場所にする」ことが目標として掲げられている。我が国では環境省が中心となって推進策作りが進められているが、住宅地などに点在する「空き地」にも規模は小さいが草原が数多く存在しそうした里地里山の緑地が生物多様性の面から注目されているだけに今回の成果は30 by 30のバックデータになることが期待される。

 研究グループは、千葉県北部の白井市内の千葉ニュータウン地域に点在する空き地36か所の草原の植物調査を行い種の多様性に影響する要因を、空き地の面積、草刈り管理の有無、空き地に隣接する宅地と農地の割合、などの面から分析した。

 調べた空き地の広さは、0.03~2.76ha(ヘクタール,1haは1万㎡)。

 千葉県北部には、江戸時代の末期まで馬の放牧地が広く存在していたことが知られる。

 そこで、今回草原の利用の歴史を調べたところ、36か所の内半数弱の15か所は明治時代から現在まで130年近くもの間農地や宅地として利用されておらず、それらは植物の種数が多い場所であることが判明、草原性植物63種、その他の在来植物295種、外来植物131種を見つけた。

 研究グループは、今回の研究を総括して「日本の草原は、かつては農業や生活を支える資源を提供する場として積極的に維持されていたが、過去100年の間に著しく減少し、草原性の動植物には絶滅が危惧される種も少なくない」ことが分かったといっている。