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伐採30年後のブナ林―ササに覆われ失われる生態系:森林総合研究所

(2021年2月4日発表)

 (国)森林総合研究所は2月4日、日本の代表的な落葉広葉樹林であるササの密生するブナ林の全ての樹木を伐採(皆伐)すると30年経っても再生しないことが継続的なモニタリング調査で分かったと発表した。除草剤などを使ってもササは急速に回復しブナのないササ原になってしまい、自然な森林生態系の機能が長期にわたって低下するという。今後さらに長期のモニタリング調査を続ける。

 新潟県にある森林総研の苗場山ブナ天然更新試験地に調査区を設け、41年間にわたってブナなどの広葉樹やササの生育状況のデータを収集、分析した。特に1978年にはブナなどの樹木を全て伐採、その後の回復状況を観察した。伐採後に除草剤の散布などによってササが増えないようにした抑制処理の効果についても調べた。

 その結果、除草剤の散布などによってササは一時的に最大5%以下にまで減少したものの急速に回復し、数年後には除草剤散布前よりも勢いを増すなどの結果になった。一方、ブナなどの広葉樹は新たに芽吹いたものの、ササの抑制処理をしなかった場合には伐採後約15年で姿を消してしまった。抑制処理をした場合には、伐採前に少数派だった広葉樹のダケカンバの一部がササの高さを上回った。しかし、肝心のブナはササの高さを超えることなく、除草剤を散布した場所でも約20年で全て消えてしまった。

 ブナは野生動物に食料となる実を、鳥類には巣作りの場所を提供するなどの働きをしており、生長の早いダケカンバには担えない重要な生態系維持の役割を果たしている。このため、森林総研は「ササが密生するブナ林を皆伐すると、ブナの欠落した状態が長期間続く」として、森林の生態系機能が長期にわたって低下すると懸念している。