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光格子時計の稼働率80%達成―「秒」再定義に貢献も:産業技術総合研究所

(2020年11月3日発表)

 (国)産業技術総合研究所は11月3日、原子時計の精度を飛躍的に向上させられる光格子時計を半年間にわたり稼働率80%以上という高稼働率で安定運転することに成功したと発表した。従来の最高記録である1カ月間程度を大きく上回る。世界標準時の基になる原子時計による「秒」の再定義に役立つという。

 光格子時計は2001年に東京大学の香取秀俊助教授(当時)が提案した技術で、多数の原子をレーザー光で捕捉、それらの振動数や周波数を同時に測定することで正確な時間が測定できる。計量標準を決める国際的なメートル条約関連会議でも時間の単位「秒」を光の周波数で再定義することが検討されているが、この光格子時計がその有力手段として期待されている。

 ただ、光格子時計は多数のレーザーを使う複雑な装置のため、従来は長期間にわたる安定運転が難しかった。これに対し、産総研はレーザー光の周波数を一定に保つ新技術を開発、長期にわたる安定運転を実現した。2019年10月から半年間にわたって80%以上という高稼働率での運転を達成、過去に報告されていた1カ月程度という記録を大きく上回った。

 産総研は「光格子時計が高い稼働率を継続して国際原子時へ寄与できることを示した」として、今後、メートル条約関連会議などで秒の再定義に向けた検討がさらに加速すると期待している。さらに、時間・周波数はあらゆる計測量の中で最も正確に測れるため、時計の精度の向上によってさまざまな基礎科学の発展に貢献するとみている。