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低反射率・高耐久性の偏光シートを印刷技術で開発―偏光シートの活用の道拡大へ:産業技術総合研究所ほか

(2019年7月1日発表)

 (国)産業技術総合研究所は71日、熱や湿気、光に対する耐久性が大きく、反射率が低い偏光シートを菱江化学(株)、東海精密工業(株)、伊藤光学工業(株)と共同で開発したと発表した。印刷によって線幅50nm(ナノメートル、1nm10億分の1m)以下の金属パターンを形成できる技術を開発し、高性能なワイヤーグリッド偏光シートを実現した。偏光シートの新たな応用展開が期待されるという。

 偏光サングラスなどで知られる偏光素子は、液晶ディスプレーをはじめとした液晶関連の機器・装置に欠かせないもので、今後は温度、湿度が高く、輝度も高い厳しい環境で使われることが予想されるため、高い耐久性が求められている。また、光学系内部で生じる反射などに起因する迷光をできるだけ抑える必要があり、反射率の低減も課題とされる。

 共同開発グループは今回、耐久性の高い金属を用いたワイヤーグリッド偏光素子の低反射率化によって、高耐久性と低反射率を兼ね備えた可視光用偏光シートの実現を試みた。

 そのために、線幅が50nm以下、アスペクト比が10以上の金属インクパターンを形成できる厚膜ナノ印刷技術を開発、世界で初めて金属インクで目的の偏光シートを得た。

 現在主流の偏光シートは二色性色素偏光シートと呼ばれるもので、開発したワイヤーグリッド方式の新偏光シートはそれよりも耐久性、透明性が高く、反射率は5%以下と低い。これは、従来のワイヤーグリッド偏光素子の反射率の10分の1以下にあたる。

 反射率の高い従来のワイヤーグリッド偏光素子は用途が液晶プロジェクターなどに限られていたが、開発した新偏光シートは偏光度のグラデーションなども可能で、偏光素子としての活用の拡大が期待されるという。