精子のタウリン不足が不妊を招く―マウスの実験で判明、新たな検査・治療法に道:筑波大学
(2018年4月20日発表)
筑波大学は4月20日、精子に含まれるアミノ酸の一種タウリンが不足すると不妊を招くことがマウスを使った実験で分ったと発表した。同大学つくば機能植物イノベーション研究センターの浅野敦之助教の研究グループと米国コーネル大学のTravis教授、Stipanuk教授との共同研究の成果で、ヒト不妊症の検査法や治療法の開発につながることが期待される。
体外受精などの高度生殖医療(ART)を受ける患者数は、1999年からの15年間で約11倍に増加している。しかし、何度治療を受けても妊娠に至らない症例も一方で増えており、その原因を通常の検査で発見することは難しいという難題を抱えている。
精巣で作られた精子は、精巣上体管と呼ばれる組織を通過しながら様々な成分を取り込んだり、機能を終えた分子を放出して受精機能を獲得していく。これを精巣上体成熟という。
タウリンは、その精巣上体管内に存在するアミノ酸の一種で、システインジオキシゲナーゼ(CDO)と呼ばれる酵素によって合成がコントロールされていることが知られている。
今回の研究は、CDO欠損マウスの雄(オス)が原因不明の雄不妊になることをStipanuk教授の研究グループが報告していることから、何故それが起こるのか明らかにしようと行ったもので、同教授らと共同でそのノックアウトマウス(特定の遺伝子を欠損させたマウス)を使って雄不妊を引き起こす分子メカニズムの解明を試みた。
その結果、原因不明だったCDO欠損マウスの雄不妊の原因がタウリン不足によるものであることが分った。
筑波大は「本研究により、精子の受精能力獲得に関わる精巣上体成熟のメカニズムの一端が明らかになると共に、精子のタウリンの不足が不妊をひきおこすことが初めて示された」とし、「今後ヒト不妊症における原因不明の受精障害とタウリンとの関係が明らかになれば、精子タウリンに着目した新たな受精機能検査法や不妊治療法の開発への発展が考えられる」といっている。