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サッカー、ゴールキーパーの能力を客観評価する指標を開発―シュートの難易度を加え、相手チームの戦力分析などに利用:筑波大学

(2018年4月19日発表)

 筑波大学体育系の平嶋裕輔特任助教、浅井武教授らのグループは419日、サッカーのシュートストップの難易度を、失敗確率として定量化する数式モデルを作ったと発表した。検証の結果、信頼性と妥当性が高かった。主観を混じえずに客観的にチーム編成を組んだり、選手獲得などの判断にも使ったりできるとみている。

 サッカーがデータを重視するようになり、得点や防御などに貢献した選手の能力を数値化して客観的な評価に使われるようになってきた。

  また映像による分析技術の高度化によって試合中のデータの取得量や種類が増え、さらに収集したビッグデータを統計学的に解析できるようになった。

  筑波大グループは、勝敗に直結するゴールキーパーの守備力として先ず「セーブ率」に着目した。相手のシュート数に対して幾つセーブできたかの割合だが、これまでは難易度が考慮されてなかった。

  そこで国際サッカー連盟(FIFA)のワールドカップ南アフリカ大会(2010)での全シュート数をロジスティック回帰分析という統計学の手法で分析した。そこからシュートストップの結果に影響を与える主要な10の要因を抽出し、難易度を「失敗確率」として定量化する「シュートストップ失敗確率予測回帰式」を作った。

  今回は2014年のFIFAワールドカップブラジル大会での64試合のシュート587本と試合のビデオ映像を基にデータを取得。2人の分析者がそれぞれ別個に収集したデータを使い、シュートストップの失敗確率を算出し評価をするなど、統計処理によって信頼性が高い失敗確率が得られた。

 これは世界トップレベルのゴールキーパーのシュートストップ能力を基準にして、選手の失敗確率を予測できるようになった。具体的には同じ失点数であっても、どのくらい難しいシュートを何本止めることができたかの“重み付け”ができるようになった。

  得られたデータはチーム編成や選手獲得の際に有効な判断材料になると期待されている。