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黄砂で急性心筋梗塞発症の可能性―飛来翌日に増加傾向:熊本大学/国立環境研究所ほか

(2017年9月4日発表)

 熊本大学、(国)国立環境研究所などの研究グループは94日、アジア大陸から黄砂が飛来した翌日には急性心筋梗塞の発症が増える可能性があると発表した。熊本県内の発症患者数と黄砂の関係を統計的に解析して突き止めた。特に慢性腎臓病を持つ患者が発症しやすい傾向があるという。今後はさらに研究を進め、健康への影響予防につなげていきたいとしている。

 研究グループには熊本大の小島淳特任准教授らや国環研の道川武紘主任研究員らのほか、京都大学、工学院大学、国立循環器病研究センターの研究者が参加した。

 黄砂は、中国を中心とする東アジア内陸部の砂漠や乾燥地帯から巻き上げられた砂塵(さじん)が季節風に乗って日本にまでやってくる現象。2月から4月にかけて九州など西日本で多く見られ、健康への影響も懸念されている。

 研究グループは、熊本県内の21医療機関の協力を得て研究会を立ち上げ、県内の急性心筋梗塞を発症した患者のうち年齢や性別、高血圧などの持病、喫煙習慣などがわかる3,713人を対象に、黄砂と発症の関係を統計学的に解析した。黄砂については、熊本気象台が20104月~20153月までに観測した41日分のデータと、当日の気温、湿度を利用した。

 解析の結果、黄砂が飛来した翌日には急性心筋梗塞発症の危険度を示す指標「オッズ比」が1.46となり、黄砂と発症の関連が明らかになった。健康影響が心配されているPM2.5(微小粒子状物質)や二酸化硫黄などの大気汚染物質の影響を除いても、その関連性は変わらなかった。ただ、高血圧などの持病がある75歳以上の男性、特に慢性腎臓病の人は黄砂飛来の翌日に急性心筋梗塞を発症しやすいことがわかった。

 今回の研究では、喫煙習慣のある人の方がない人よりも発症しやすいとの結果も出たが、研究グループは従来の研究の蓄積から喫煙が急性心筋梗塞の危険因子であることは明らかだとして「黄砂を気にするよりも、まず喫煙を避けるべきだ」と注意を促している。