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ニワトリのiPS細胞の効率的な樹立に成功―絶滅危惧鳥類への感染症などの影響評価に期待:国立環境研究所ほか

(2017年5月8日発表)

(国)国立環境研究所の研究グループは58日、岩手大学、東北大学、順天堂大学、近畿大学の研究者らと共同で、ニワトリのiPS細胞(人工多能性幹細胞)を効率的に樹立することに成功したと発表した。

 鳥類のiPS細胞の樹立については海外で数例報告があるが、効果的な樹立法は未確立であった。今後、試験管内で鳥類の様々な細胞を創り出せるようになるため、感染症や農薬などが絶滅危惧鳥類の生態に与えている影響などを効率的に評価できるという。

 研究グループは今回、実験モデルにニワトリのヒナの体細胞を用い、この細胞に多能性を持たせるための初期化誘導遺伝子としてOct3/4をはじめとする6種類の遺伝子を導入した。その際、MyoDという遺伝子の転写活性領域の一部をOct3/4遺伝子に結合して、Oct3/4の転写活性を特に高める工夫をした。

 この転写活性型Oct3/4など6つの遺伝子を、遺伝子の運び屋であるベクターに連結し、外来遺伝子を目的細胞のDNAに導入するシステムであるPiggyBacトランスポゾンシステムを用いて体細胞に入れた。

 その後の観察で、ニワトリの体細胞の初期化が認められた。また、この初期化細胞は長時間の継代が可能であった。この細胞の分化能力を調べたところ、内胚葉、中胚葉、外胚葉の三胚葉に分化し、多能性を有するiPS細胞であることが確認された。

 このiPS細胞の多能性状態をさらに詳しく解析したところ、樹立したiPS細胞はFGFという増殖因子と、PouVおよびNanogという遺伝子の働きにより多能性が維持されていることが明らかになったという。

 今回の成果を他の野性鳥類由来の体細胞へ応用すれば野性鳥類由来のiPS細胞の樹立が期待できる。絶滅危惧種への感染症や農薬などの影響評価は生体ではできないが、iPS細胞を使って様々な細胞を創り出せば、影響評価系を構築することができる。こうした応用が将来的に期待できるとしている。