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ダウンヒルレーサーが体に受ける空気抵抗を解明―世界に先駆けての成果、ウェアなどの開発に朗報:筑波大学

(2017年1月6日発表)

流速 40 m/s 時におけるダウンヒルレーサーモデル周りの流速分布。赤い領域は流速が大きい部分を示し、青い領域は流速が小さい部分を示す。

 筑波大学は1月6日、アルペンスキー競技の一種ダウンヒル(滑降)でレーサーが体(からだ)全体と各部分で受ける空気抵抗(抗力)を解明したと発表した。

 ダウンヒルという名称は、山を駆け下りるイメージから付けられた英語名で、アルペンスキー競技の中で最もコースが長いスリル満点のスピード種目。スタートとゴール位置との高さの差であるコースの標高差は、男子の場合800〜1,100mに達し、スピードは時速120kmを超えることもあり、レーサーは体全面にわたって猛烈な空気抵抗を受ける。

 このため、これまでもより安全により早く滑降できるようにすることを目指してレーサーが受ける空気抵抗に関する研究は行われ、実験風洞を使って滑走フォームと抗力の関係を明らかにしたり、レーサーの体を覆うスーツやスキー用具を改良する研究などがなされてきた。

 しかし、風洞を使っての実験では、レーサーの全身にかかる抗力は計測できるものの、身体各部の抗力分布を計測することは極めて難しく、抗力が生じる原因となる気流の渦構造も不明のままの状態にある。

 今回の研究は、同大学のスポーツ流体工学実験棟の低速低乱風洞実験装置と情報メディアセンターの数値流体解析システムを使って行われ、ダウンヒルにおけるレーサーの身体全体と、身体部位ごとの空力特性と渦の構造を解明することに成功したもので、「世界に先駆けて明らかにした」と筑波大はいっている。

 実験は、実物大のダウンヒルレーサーマネキンを使い風洞実験装置で風速を変えて3D(3次元)レーサーモデルにかかる抗力と揚力を計測すると共に、格子ボルツマン法と呼ばれる手法を使ってレーサーモデル周りの渦構造を可視化する方法で行った。その結果、クラウチング姿勢(前傾姿勢)のレーサーの身体各部位が受ける空気抵抗は、下腿部が全体の50%前後を受けて最も大きく、上腕部、頭部、大腿部の順になることが判明したという。

 筑波大は「今まで究明できなかったダウンヒルレーサー周りの渦構造が可視化されると共に、部分抗力が定量的に明らかになり、新型ダウンヒルスーツの開発やデザインへの適用、さらには最新スポーツ技術の理解・習得が促進されるものと考えられる」といっている。