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もっと光を! ユノー木星へ

(2016年8月15日)

木星に近づくユノー ©NASA 

    2016年7月5日、5年前の2011年に地球を離れた1機の探査機が木星に到着した。その名は「JUNO:ユノー」。木星=Jupiterの妻の名前を付けた、重さ3.6トン(燃料を含んで)もある大型の宇宙船である。

  木星の上空5,000kmを秒速58kmという人類が到達したもっとも速いスピードで通過しながらメインエンジンを約30分も逆噴射することで減速して、木星の重力圏に捕まってその周りを回り始めた。

 この探査機には今までの外惑星(木星以遠を指す言葉)の探査には無かった大きな特徴がある。

 木星は、太陽からの距離が地球の5倍。ということは受けるエネルギーは太陽までの距離の2乗に反比例するので約25分の1しかなくなる。これまで何機も木星に向かった探査機はみんな原子力電池といって、プルトニウムの崩壊熱を電気に変換するRTG(通称:原子力電池)という電源を持って行った。

 ユノーでは初めて太陽電池を使い木星観測を行うのだ。

  そのために用意された太陽電池は1枚が“長さ9m、幅2.7m”もある巨大なものが3枚。地球軌道なら14キロワットも発電できる、それでも木星では500ワットしか発電できない。この少ない電力ですべてを動かし続けなければならないユノーはきっといつも「もっと光を!」と叫んでるに違いない。

  これから約2年にわたって、木星の周りを一周54日かかる長い楕円軌道を回りながら木星の重力場、磁場、電場といった周辺の環境を調べ、カメラで木星の雲や、北極、南極に現れるオーロラの観測を続けることになっている。

 木星はその巨大な磁場と衛星イオから供給されるプラズマによって粒子が加速されて、南北極にわたり巨大なオーロラが発生している。オーロラを近くで見るユノーの観測結果と、地球軌道からその全体像を見ている日本の「ひさき」衛星の観測と合わせて、謎に包まれた木星オーロラの正体が明らかになることが期待されている。

   日本でも、2010年に打ち上げに成功、今も実験を続けているIKAROSの技術を使った本格的な宇宙ヨットが計画されている。2020年代に打ち上げて、強力なイオンエンジンと宇宙ヨットを使い飛行して、木星のスイングバイを利用して“木星トロヤ群”という小惑星群まで飛んで行く「電力ソーラーセイル」構想だ。ここでは千平方メートル以上の大きさを持つ薄い膜状の太陽電池を使うことが想定されている。外惑星を、原子力に頼らないで光の力だけで探検する日もそう遠くない。

小笠原 雅弘(おがさわら まさひろ)
NEC、チーム「はやぶさ」メンバー。軌道系、航法誘導系担当、特にイトカワへの着陸に使われたターゲットマーカやフラッシュランプを手がけた。1985年にはじめてハレー彗星へ旅した「さきがけ」をはじめ、スイングバイ技術を修得した「ひてん」、月のハイビジョン映像を地球に送り届けた「かぐや」など日本の太陽系探査衛星にずっと携わってきたエンジニア。
現在、NEC航空宇宙システム勤務。