[編集発行](公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

ここに注目!

コンピューターを用いた折り紙の研究

(2017年3月15日)

コンピューターを使って設計された
曲線での折りを持つ折り紙作品

 私たちの身近にある「紙」は、文字や絵を描くキャンバスとしてだけでなく、折ることでモノを包む目的にも古くから使われてきました。紙を折ることで様々な形を作れることは、おそらく紙が登場した時代から多くの人が知っていたことでしょう。紙を折る、というと、まっすぐな線で平らに折る様子が真っ先に想像されますが、角度を付けて折ることで立体的な形を作ることができ、曲線で折れば曲面を作ることもできます。折り方を工夫すると、驚くほど多様な形を作りだすことができます。
 
 日本では、多くの方が幼少期に「折り紙」を教わり、紙を折って形を作る遊びを楽しんだ経験を持っています。紙を折って形を作る、遊戯としての「折り紙」は、日本では数百年もの歴史をもち、現代においても幅広い世代に親しまれています。折り紙は日本が世界に誇る文化の1つであり、その象徴として、紙を折ることを表す「Origami」という表記と「オリガミ」という発音は、世界各国で使用されています。今では新しい折り紙の作品が世界中のあらゆるところで日々創作され、それらの写真や作り方、新しい技法がインターネットを通じて発信されています。
 
 過去から現在までの長い折り紙の歴史の中で、折る技術、つまり1枚の紙から意図した形を折り出す技術は進歩してきました。その背景には、「紙を折る」という操作を幾何学の言葉に置き換えることで達成された数学的視点からの知識の積み重ねがあり、それに基づいて折り紙の「設計」に関する理論が作りだされてきたことがあります。さらに、この設計に必要な計算をコンピューターに行わせるためのプログラムが登場し、折紙の世界は目覚ましい進歩を遂げています。その中でも特に、曲線での折りを含む曲面折紙の設計や、変形のシミュレートには、コンピューターは無くてはならないものとなっています。 
 
 折り紙には、1枚の素材から様々な形を作る、という一面だけでなく、大きなものを小さく折りたたみ、必要に応じて、また大きく広げる、という側面もあります。このような折り紙の技術は、たとえば宇宙空間にものを運ぶ時に役立ちます。また、折ることで素材の強度を高めることができる、という側面も持ち合わせています。現在の技術では、「折る」という工程の自動化が課題となっていますが、いずれこの問題が解決されたとき、折り紙の技術の活用範囲が、大いに広がることが期待できます。 
 
立体的な折り紙の設計を行うために 開発されたソフトウェア
筑波大学の三谷研究室では、主にはコンピューターを使って、紙を折ることで可能となる「カタチ」の可能性を探求することを行っています。複数の折り線が互いに影響を与える折り方や、立体的な形、さらには曲線で折ってできる形は、コンピューターを使わずに作り出すことが困難です。折り紙の数理的な制約を考慮することで、1枚の紙で作れる形を、次々に作り出すことが可能になります。また、実際に作るときに必要となる折り線の配置も計算で求め、印刷したり、ときには機械で折り筋を付けるなどして、設計通りの形を作り出すことが可能となります。まさに、平面から立体を作り出す技術と言えます。 
 また、決められたパターンの折り線の組み合わせで、何通りの形が作れるか調べたり、その折り方を自動で導き出す方法を考案するなど、コンピューターを活用しながら、折り紙の可能性を探る研究をしています。古くからの伝統と最先端のコンピューター技術を融合させた、新しい研究領域と言えます。
 
 最後になりますが、私が監修を担当させていただいている企画展「3次元のかた ち~作る技術、感じる技術~」を紹介したいと思います。平成29年3月25日から6 月11日の期間、つくばエキスポセンターで開催され、折り紙はもとより、平面から立体を作り出す技術、立体を感じる技術について、最先端の研究を幅広く紹介 する企画展となっています。多くの方に楽しんでいただけましたら、監修を担当 させていただいた立場として、これ以上にない幸いです。

三谷 純(みたに じゅん)
筑波大学システム情報系 教授.1975年 静岡県生まれ.2004年, 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了. 博士(工学). 理化学研究所研究員を経て2005年より筑波大学に勤務. 主な研究テーマは形状モデリング,計算幾何学,計算折紙,デジタルファブリケーションなど.