海底山脈で反射した地震の海中音波の観測に成功
:防災科学技術研究所

 (独)防災科学技術研究所は4月15日、2008(平成20)年7月24日に岩手県沿岸北部でマグニチュード6.8の地震が発生した際、地震発生後50分以上もたってから東北地方の太平洋岸に展開する高感度地震観測網(Hi-net)などが捉えた継続時間の長い微弱な振動は、この地震の地震波が変化した海中音波が日本の東2000~2500km離れた北太平洋に連なる海底山脈から反射したものであることが観測波形の解析で分ったと発表した。
 この地震の震源は、沈み込む太平洋プレート内部の深さ約110km地点。観測した振動は、周波数1~5ヘルツの上下動成分が際立っており、沿岸部で振幅が大きく、継続時間が非常に長く、普通の地震のように明確なP波(縦波)もS波(横波)も含まないことなどから、地震波から変換されたT波と呼ばれる海中音波と推定された。T波は、海底下の比較的浅い場所で発生する地震で、しばしば観測されるが、今回のように海底山脈で反射してきたT波をキャッチしたのは今回が初めて。
 この時のT波は、微弱な振動まで高精度で計測できるHi-netの観測点約50カ所でキャッチしているので、その観測波形を詳しく解析してT波の到来経路を調べた。その結果、震源からプレート内を伝わってきた地震波は、日本海溝付近で海中音波(T波)に変換され、その後、海中を伝わって東へ進み、北太平洋の海底火山「天皇海山列」で反射、再び日本に到達したと推定された。実際に観測したT波の波形は、天皇海山列から反射したとして理論的に計算した波動のエネルギーパターンと良く一致した。
 地震の海中音波の海底山脈での反射波の計測は、今回が初めて。これは、海底山脈が地震の海中音波に対して「壁」の様に働き、その伝播経路に影響を与えることを示している。
 この研究成果は、4月18日、米国地球物理学連合(AGU)の「Geophysical Research Letters」にオンライン掲載された。

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