(独)産業技術総合研究所は5日、大気中の化学物質の濃度分布や、それに曝される人口分布を予測し、地図上に表示するソフトウェアを開発したと発表した。
化学物質への暴露とそれに伴うリスクは、従来、観測データだけに基づいて評価されていた。しかし、評価すべき物質の数が多くなり、対象となる地域が広くなり、多くの労力と費用がかかるようになったため、新たな対応が求められている。
同研究所は、2002年に、化学物質の大気中の濃度を、排出量と気象条件から計算するソフトウェア「ADMER」(正式名称:産総研―暴露・リスク評価大気拡散モデル)を開発。今回開発したソフトは、そのバージョンアップ版で、インターネット上のグーグル社の地図情報閲覧ソフト「グーグル・アース」にリンクさせて化学物質の濃度マップを表示できるようにした。
日本では、環境汚染物質排出移動登録(PRTR)制度が施行され、さまざまな化学物質の排出量データが入手できるようになったこともあって、ADMERの利用者は自治体や事業所などを中心に年々増加し、3000人を超えるユーザーが登録、広く大気系化学物質のリスク評価に利用されだしている。しかし、実際に細かい領域で用いると、背景の地図にも解像度の高さが必要となることから、対応する地図データが高価になるなど、一般ユーザーには不便さがあった。
そこで、今回のバージョンアップでは、グーグル社 の衛星写真の上に計算結果(濃度マップ)を表示する機能を加え、ユーザーが高価な地図データを使用しなくても、詳細な地図データを背景として利用できるようにした。
No.2008-31
2008年8月11日~2008年8月17日