高エネルギー加速器研究機構(KEK)は8月6日、同機構を中心とする研究グループが「ファン・デル・ワールス力」という分子間に働く力で結びついた2原子分子のネオンに軟X線放射光を照射して電子放出実験を行い、放出された光電子と分子が解離して生じたネオンのイオン「Ne+」と「Ne2+」を同時計測法で観測(同時観測)した結果、光電子を放出したネオン原子が「Ne2+」として検出されることを突き止めたと発表した。等価な2原子から成る分子で内殻の電子を失った原子が特定されたのは世界で初めてである。
等価な2つのネオン原子から電子が1個失われる場合、どちらのネオン原子が電子を失い、どちらが失っていない状態であるかは、直接観測を行わない限り分からない。しかし、電子が失われてできた孔(内殻空孔)は、10-15秒という超短時間のうちに外側の電子によって埋められてしまうため、内殻空孔を持った原子を直接観測する実験にはこれまでどこも成功していなかった。
このため、電子がどちらのネオン原子から放出されたかを特定することは可能なのか、可能だとすればどのような観測を行えばよいのか―が量子力学上の基本的かつ重要な疑問になっていた。
今回の成果は、その疑問に答を出したもので、米国物理学会誌「フィジカル・レビュー・レターズ」オンライン版に掲載された。
No.2008-31
2008年8月11日~2008年8月17日