古米臭発生の少ないイネ早期に選抜できるDNAマーカーを開発:作物研究所

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所は7月29日、古米臭の発生が少ないイネの早期選抜が簡単にできるDNA(デオキシリボ核酸)マーカーを開発したと発表した。このマーカーで古米臭発生の原因となる米の脂質の酸化分解に関係する「リポキシゲナーゼ(LOX)」という酵素の有無をLOX遺伝子の有無で知るというもの。この酵素が無いことは、古米臭の発生が少ないことを意味する。
 常温で貯蔵した米の古米臭発生の主な原因は、LOXが作る米脂質の過酸化物が分解される時に生じる揮発性物資にある。米のLOXは3種類あり、LOX3というタイプのものが最も活性が高い。今度の研究で研究者は、世界の米を調べ、LOX3を持たない米を発見。LOX3を持つ米と比べた結果、持たない方の古米臭成分蓄積量が、持つ方の3~5分の1であることが分かった。
 このことから、同研究所は、遺伝子の塩基配列情報を利用、イネの苗葉一枚でLOX3の遺伝子の有無を判別できるDNAマーカーを2種類開発した。LOX3の無い「Daw Dam」という品種と通常の品種では、LOX遺伝子の塩基配列が一つだけ違うのを利用した。一つは、特定の塩基配列を解析に必要なだけ、倍々に増幅(PCR法)したDNAを酵素処理して切断、電気泳動法で断片の大きさを調べる。LOX3を持たないイネのDNA断片は酵素で切断されないが、LOX3を持つイネのDNA断片は切断され、小さくなることで区別できる。
 もう一つの方法では、PCR法で増幅したLOX3のDNAをプレート上に貼り付け、識別用のDNAに結合するかどうかで調べる。結合すればプレート上に点として見える。従来の方法は、米のLOX3に対する抗体を利用していたので、米を収穫するまで待たなければならず、分析にも大変な労力と時間を要した。新手法は、米の実る前に判定でき、古米臭発生の少ない品種育成の効率化が期待される。

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