筑波大学は7月28日、横浜市立大学との共同研究で、インフルエンザウイルスの複製(増殖)に中心的な役割を果たしている酵素「RNA(リボ核酸)ポリメラーゼ」のサブユニット間の構造を世界で初めて解明したと発表した。
インフルエンザは、ウイルス感染によって起こる。特に最近は、鳥インフルエンザウイルスの人への感染による世界的大流行が懸念されており、このような新型ウイルスに対するワクチンや新薬の開発が世界的な課題になっている。
中でもインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、ウイルスの複製に中心的な役割を担っているため、新規の薬剤開発のターゲットとして注目されている。
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、3つの部位(サブユニット)から構成されている。共同研究グループは、その3つのうちのどれか1つのサブユニットでも欠けるとRNAポリメラーゼは働きを失うことに注目し、そのうちの2つのサブユニットの結合部位の構造解析を兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」の構造生物学ビームラインを使って行った。その結果、2つのサブユニット間の結合に重要なアミノ酸残基(タンパク質の構成単位)を見つけ、このアミノ酸残基の変異がサブユニット間の結合を阻害し、またポリメラーゼの活性を著しく低下させることを確認した。
インフルエンザウイルスには様々な種類があるが、この相互作用はインフルエンザウイルスで共通に見られるもので、今回の研究により2つのサブユニットの結合を阻害し、ウイルスの増殖を直接抑えるような新規の薬剤の開発が可能になった。新しく開発される新薬は、これまでのワクチンとは違いどんなタイプのインフルエンザにも効果のある画期的なものになることが期待されている。
この研究成果は、英国の科学誌「ネイチャー」オンライン版に、7月27日(日本時間28日)に掲載された。
No.2008-30
2008年7月28日~2008年8月3日