(独)物質・材料研究機構は7月28日、第一電通(株)と共同で、紫外線領域の光を非常に良く通す新しい単結晶を開発したと発表した。 次世代の半導体関連装置や光学関連機器の分野では、紫外線やより波長の短い真空紫外線を良く通す新しい光学材料が必要とされている。新開発の単結晶は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)にフッ素をドープ(添加)して実現したもので、紫外・真空紫外領域で利用可能な光学材料になると期待される。 ガーネット(ざくろ石)型単結晶の育成では、結晶の中心部にコアと呼ばれる屈折率の異なる部分が生じやすい。新単結晶は、このコアをなくしたことで、屈折率分布が均質な光学素子の製作が可能となった。 また、フッ素ドープにより透過率が波長193nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の紫外線の場合で550%と、従来のYAG単結晶の2倍に向上した。 紫外・真空紫外領域で使える光学素子用材料としては、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG)と呼ばれる同じガーネット型の単結晶が知られている。今回の開発は、LuAGよりも特性が劣るとされていたYAGを見直すことから出発し、結果として従来を上回る特性を備えた材料を得た。 今後は、結晶成長に影響する各種部材の高純度化、フッ素ドープ量の最適化などによって、さらに透過率の向上を目指すとともに、結晶の大口径化も進める方針。 この研究成果は、2009年3月に開催される応用物理学会春季学術講演会、日本セラミックス協会春の年会、各種国際会議などで発表する予定。 詳しくはこちら |  |
新開発のフッ素ドープYAG単結晶(提供:物質・材料研究機構) |
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