量子コンピューターに一歩、室温で初めて「量子もつれ」の生成に成功:筑波大学/産業技術総合研究所/シュトゥットガルト大学

 筑波大学は6月3日、(独)産業技術総合研究所、ドイツ・シュトゥットガルト大学と共同で、人工ダイヤモンドを使って量子コンピューター実現に一歩近づく成果となる「量子もつれ」と呼ばれる状態を室温で作ることに初めて成功したと発表した。
 量子もつれとは、複数の粒子が空間的に離れていてもあたかも一つの物体であるかのように振舞い分離できない量子力学的な相関がある状態のこと。
 この量子力学特有の性質である量子もつれを利用すれば、スピンや光子などの量子力学的状態を計算の最小単位(量子ビット)とする超高速並列計算が可能な夢の量子コンピューターが実現できると期待されており、世界中で研究が行われている。
 しかし、固体素子で量子もつれ状態を作るのは容易ではなく、これまで極低温で超電導体を使って生成した例が報告されているだけであった。
 今回研究グループは、マイクロ波プラズマ化学堆積法という方法で人工ダイヤモンドを合成し、その壁を突破した。
 天然のダイヤモンドは、構成元素の99%が質量数(原子量)12の炭素でできているため、量子ビットになりえる核スピン(原子核が持つ磁力)を持たない。研究グループは、核スピンを持つ質量数13の炭素(13C)を多く含む人工ダイヤモンドをマイクロ波プラズマ化学堆積法で合成し、ダイヤモンド中の窒素・空孔複合体の電子スピンと核スピンを用いて量子もつれ状態を室温で作り出し観測することに成功した。
 この研究成果は、米国の科学誌「サイエンス」の6月6日号(オンライン版)に掲載された。

詳しくはこちら