光を直角に曲げられる光集積回路の配線を開発
:物質・材料研究機構/東北大学

 (独)物質・材料研究機構と東北大学は5月30日、シリコン基板上に描いたパターンに沿ってポリスチレンの微小球を配列、回路が直角に曲がっていても光が通る光集積回路配線技術の開発に成功したと発表した。この配線は、集積回路内部に複数個配置されたCPU(中央演算装置)間で、情報を高速でやりとりする回路に使えるばかりでなく、導波路となる微小球の内部を伝わる光を特殊な顕微鏡で観察した結果、波長によって進行方向を変える分波器としての特性を持つことも分かった。
 近年、コンピューターの更なる高速化に向け、集積回路内部の情報伝達の一部を光通信に置き換える試みがされている。それには、数µm(マイクロメートル、1µmは1000分の1mm)の幅で最大数mmに渡って光を伝搬させ、さらに数µmの曲率半径で自在に配線を行う必要がある。しかし、これまでの光ファイバー通信で使われてきた技術では、屈折率差が大きくとれないため、急な曲がり角のある配線は出来なかった。特殊な結晶を使う方法なども開発されているが、外側に光を閉じ込める構造が必要で、µm単位の配線は困難だった。
 今回の開発で、研究者は、シリコン基板に電子線描画などを用いて、2µm間隔の逆ピラミド型ピット(穴)を碁盤の目のような格子状に作った。この基板にカバーガラスの一端を着けて斜めに立てかけ、基板とカバーの別の一端で形作る楔形の隙間に直径2µmのポリスチレン微小球を含んだコロイド溶液を流し込んだ。すると乾燥が進むにつれ、微小球がピットに吸い付けられ、互いに密着して配列されることが分かった。
 研究者は、配列がL字形に曲がった所でも光が伝わることを電子顕微鏡などで確認した。描画パターンを目的の光集積回路パターンにすれば、ポリスチレン微小球の配列で光配線が出来る。

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基板上に配列されたポリスチレン微小球の拡大写真(提供:物質・材料研究機構)