(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月16日、東京大学気候システム研究センター、大阪府立大学と共同で我が国の熱帯降雨観測衛星(TRMM)の降雨レーダーのデータから、地球を巡る風を動かす素である大気中の熱エネルギーの立体的分布を過去10年分推定し、世界の研究者に提供すると発表した。気候研究の精度向上への貢献が期待される。
どの高さの大気がどのくらい暖められているかを知ることは、地球全体の雲の動き、つまり風の吹き方を理解し、予測する上で重要である。大気中の水蒸気が凝結して雲になる時、熱を出して大気を暖める。温まった大気は軽くなるので、雲の多い地域の大気と雲の少ない地域の大気の間では力のバランスが微妙に違ってきて、これが大気を動かす素となる。この雲や雨が作られる時の潜熱加熱量の高さ分布は、これまでは狭い地域で限られた時間しか観測されていなかった。
それが、1997年11月にJAXAが3種の降雨観測センサーを搭載して熱帯・亜熱帯地域の降雨観測に特化したTRMMを軌道に乗せたことで、この地域での連続的な情報取得が可能になった。共同チームは、TRMMの降雨レーダーが捉えた3次元の雨データから計算する。降雨レーダーの3次元降雨データに基く推定データ算出は、世界でも初めて。熱帯のどの地域で、どの高さまで熱エネルギーが持ち上げられているか、より正確な情報が発信出来るようになる。
No.2008-19
2008年5月12日~2008年5月18日