珪藻でタンパク質合成システムの進化を解明
:筑波大学/京都大学

 筑波大学は5月13日、京都大学と共同で、日本沿岸域で養殖のりの色落ちを引き起こし経済的な被害を与える珪藻(真核微細藻類)について、ゲノム(全遺伝情報)探索や分子生物学的手法を使って調べた結果、タンパク質合成システムの進化には遺伝子の細胞間移動(遺伝子の水平伝播)が大きく関わっていることが明らかになったと発表した。
 生物のタンパク質合成システムで最も重要なタンパク質の一つであるペプチド伸長因子1α(EF-1α)の遺伝子は、真核生物の共通祖先から遺伝してきた(垂直伝播)ものと考えられてきた。
 一方、いくつかの真核生物は、EF-1αと類似したEF-Like(EFL)と呼ばれるタンパク質だけを持つことが分かってきたが、EFLのタンパク質合成システムの進化などは不明で謎とされていた。
 今回の研究で、珪藻のみがEF-1αとEFLの両遺伝子を持っていることが初めて明らかになり、分子生物学的手法などで解析を行った。その結果、[1]EF-1α配列に基づく分子系統解析から、珪藻のEF-1αは従来考えられていたように遺伝(垂直伝播)によって獲得されたものであり、[2]EFLの配列解析から、珪藻は進化的に遠縁のリザリア生物群の一部から細胞間移動(水平伝播)によってEFL遺伝子を獲得していることが判明、垂直伝播によるEF-1αと水平伝播によるEFLの両方をゲノム中に保持していることが分かった。
 また、タンパク質合成のために、EF-1αは別のタンパク質EF-1βと相互作用を行う必要があるのに対し、EFLは単独でタンパク質合成に関わる「スーパーペプチド伸長因子」である可能性があることも分かった。
 この研究成果は、米国のアカデミー紀要電子版に5月5日付けで掲載された。

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